第5話『和解』

 そこからサバラスの態度は一気に氷解した。

 メンバーが森で難儀していると、どこからともなくやってきて便宜を図ってくれた。

 下生えの低木に邪魔されて足場が確保できなければ枝打ちしたり、雪に埋もれていれば風の精霊に命じて雪を蹴散らした。

 天候が悪くなれば風雪を凌げるところを教えて回り、あかぎれだしもやけだと騒いでいれば手作りの軟膏を配り、狼が近くを通りかかると遠くに誘導することもあった。

 もちろん、ツリーリジェネレーションやアースフォローアップを指南することもあったし、請われれば講習で持論を披露するのだった。

 かと言って、リーダーたちのやり方を邪魔することもなかったし、むしろ新しいやり方として進取の気性にも富んでいた。

 多機能の腕時計型オービット・アクシスの見方を覚え、全体の進捗を確認すると、アドバイスもより専門的になった。

 それから、ナタルを始めとするカエリウスの仕事を辞退した男性メンバーの不安をきれいに払拭してくれた。タイラーは伏せていたが、代表レンナの修法陣の有効性を説いて、おさおさ滅多なことは起こらないと太鼓判を押したのだった。

 仕事が終わった後は大概宴会と決まっていて、サバラスを囲んで料理もお酒もふんだんに用意して騒いだ。

 女性メンバーはこの時とばかりに料理の腕を奮い、甲斐甲斐しいサービスを心得ていたし、男性メンバーはサバラスを盛り立てながら万世の秘法の論議に余念がなかった。

 サバラスは、こんな愉快なことはついぞなかった、という風で笑みを絶やさなかったし、メンバーは本来のノリも復活してどこまでも陽気だった。リーダーたちはサバラスの協力でハイペースで仕事が進行しているのを喜んだ。

 民話の里の頑固者たちも、サバラスがなぜ非協力的だったのか知ることになり、その変わりように呆気に取られた。

 NWSが里での懇親会を申し出たことにより、彼らも固かった腕を解き、歩み寄ることで誤解を解いた。

 そして、つくづく若人と交流することほど有益なことはないと悟るのだった。


 あれから、2か月半……。

 繁緑の四月修迷の二日のお昼休み。

 新緑の草地が広がるサバラスの小屋の前で、ピクニックを楽しんでいたメンバーたちの元に、民話の里からカメラマンがやってきた。

 集合写真を撮りましょう! と持ちかけられ、若い彼らは我先にサバラスを中央に据え、おしくらまんじゅうさながらに折り重なった。

 一番はしゃいでいたのはポールだったが、誰も言うことを聞いちゃいなかった。

 女性メンバーもお揃いのポーズを取ってノリノリだったし、リーダーたちは無秩序な男性メンバーを立たせて、自分たちもサバラスを囲んだ。

「はい、行ってみよう! NWSは⁈」

「今日もバラエティー‼」

 ポールを中心にサバラスに向かって手を差し出して、最高の一枚は撮られた。

 笑顔溢れる緑の中のワンショットだった。

 
















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