第5話『初の対峙』
他のリーダーが民話の里に報告へ往く間、ポールとキーツはサバラスの小屋に足を運んでいた。
手にはパラティヌスの造り酒屋の大吟醸『
——キーツと二人、やいやい言いながら選んだ、品評会で金賞を受賞した銘酒だ。
ずいぶん張り込んだが、気持ちよく受け取ってもらえるなら安いものだ。
「ほんじゃ、行くよ」
「うん」
ドアをノックしようとすると、サバラスが中から出てきた。
「そろそろ来る頃だと思っておったわい」
「!」
二の句が継げない2人に、サバラスは言った。
「入れ」
顎で指図されて、2人は小屋に入る。
「お邪魔しまーす」
ポールはわざと気楽な調子で言った。
中は暖かく、寂しい夕方を彩るように暖炉の火は赤々と燃えている。
夕食なのだろう、小ぶりの釜には美味しそうなシチューが煮えていた。
テーブルの上では吹かしかけのパイプの煙がたゆたっている。
老人の一人住まいの乱雑さはあったが、不便はしていなさそうだった。
「座れ」
テーブルには4脚の椅子があり、ポールたちはサバラスの対面の席に並んで座る。
「あの、サバラスさん、この度はウチのメンバーが大変お世話になりました。これつまらないものですが……」
「ミルラ君から情報を仕入れたか。小賢しいマネをする」
言いながらサバラスは酒に目がないのか、しっかり受け取った。
「ミルラから聞きました。身体を冷やした彼女に暖炉を勧めてくださったり、熱々のミルクを振舞っていただいたとか。しかも、民話の里へ連絡して、防寒着を購入していただいたそうで。急場のことで私たちの配慮が及ばないことことを手配していただきました。ありがとうございます」
「あのままほっといて、風邪を引かれるのも具合が悪いんでな」
身も蓋もないことを言うサバラスだったが、気を遣わせまいとする温情を滲ませた。
「民話の里には私たちの仲間が報告に往きました。今後は再発防止に努めますので、どうぞお許しください」
2人して頭を下げる。
「まぁいい。カエリウスに不案内なのは責められん。今日の仕事で思い知ったろう。準備万端にして仕事に臨むことだ」
「はい」
ポールとキーツは顔を見合わせて笑った。
「では、私たちはこれで……」
「わかった、明日も頼むぞ」
「はい!」
席を立ち、ドアに向かいかけたポールは一言いった。
「シチュー美味そうっすね」
思わずサバラスの顔が緩んだのを、ポールは見逃さなかった。
「……食べていくかね?」
「いいんですか⁈」
機を逃さずポールは前のめりになった。
キーツは、こうなってはポールの独壇場と諦めて、とことん付き合うことにした。
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