第5話エルヴィス・ダチュラという男
エルヴィス・ダチュラ、マリリンの恋人である。
顔立ちは整っているとはいえ強面の部類に入り、無精髭を生やしたナイスミドルである。
嫉妬深く独占欲の強い彼の正体は、北の国の王である。
…
ローヴァス、大陸最北端の国でとても小さな国である、しかしながら科学技術は大国をも上回るため貧しい国ではない。
故に、他国からは狙われ戦争をけしかけられることは度々あった。
戦争は絶えず民達は疲弊していた、その現状を変えたのがエルヴィスである。
エルヴィスは戦争をけしかけてくる国に対し噂を流し、内部から国を壊すことにしたのだ。
民達は戦争が起こる頻度が格段に減り歓喜した、やっと平穏に暮らせると。
その一方でエルヴィスは、卑怯な手法で国を滅ぼす外道君主と呼ばれるようになった。
国のために汚名を背負う王と聞けば何やらカッコいい気もするが、違うのだ。
この男にとって、自国は大きな研究所潰されては困る、その上で他国は巨大な実験場で愚かな王やそれに賛同するものはモルモットでしかない。
どんな情報を流せば、民が怒り暴動を起こし、王族達の間で醜い争いが起きるか、エルヴィス・ダチュラという男は眺めて研究・実験しているのだ。
全ては自身の快楽のために。
要はエルヴィスは史上最悪の享楽主義というわけである、事実彼の毒牙にかかり滅びた国は数知れない。
だが、それもまた自業自得なのかもしれないが。
自分たちが楽な暮らしをするために小国を滅ぼそうとしたのだから、やり返されても文句は言えまい。
エルヴィスは厳重に入れられた毒薬を見て嬉しそうな顔をした、これは聖王国の王子とクソ女を処刑するための毒薬だ。
聖王国での処刑は自害しかない、つまりは毒杯を煽るのだ。
「マイ・ロード、そろそろ…。いやですわ、恐ろしいお顔ですこと。」
クスクス笑うのはローヴァス最強と名高い女騎士レーヌスだ、彼女とは犬猿の仲で笑顔で罵倒し合っている。
それでも、レーヌスはマリリンという花嫁が嫁ぐ日を楽しみにしており「貴方に忠誠は誓いませんけどマリリン様なら喜んで」と言ったくらいには気に入っている。
「綺麗な赤だろう?おじさんの渾身の毒薬だ、飲むとな足の先から痺れて、頭痛、吐き気、下痢を引き起こし、最後は激痛に悶えながら一週間かけて肉体を蝕み死ぬ。という毒だ。」
子供のような無邪気な笑顔、それこそがこの男の恐ろしいところだ、レーヌスはその毒の効き目を見たことがある民達を襲おうとした他国の兵士に投与していた。一週間後死んでいた。
「その馬鹿王子も愚かですこと、貴方を敵に回さなければもう少し生きれたでしょうに。」
「おじさん的には楽しくていいけどな」
エルヴィスはケラケラ笑った。
「見てー、おじさま。綺麗なお花」
「あー、こらこら。今から結婚式ようのドレスを見に行くんだろう」
「ごめんなさい、」
しょぼくれるマリリンの頭を撫でエルヴィスはその花を見てほくそ笑む。
「それに、あれは触っちゃダメだろう?」
「そうなの?」
「ああ、ダチュラは毒花だからな」
ダチュラの花言葉は『夢の中』『貴方を酔わせる』。
まさしく、マリリンはエルヴィスの魅せる夢に囚われ彼に酔わされている、永劫に醒めぬ夢に。
毒に囚われ溺れ彼女はもう二度と目覚めない。
…
ダチュラは毒花、植物全体に幻覚性のアルカロイドを含みます。決して口に入れませんように。
たとえ、どんなに魅力的でもね。
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