第12話
殿下とのお茶会を乗り切った私は治療師の服に着替えて王宮を出る。もちろんドレスは返却したわ。貰っても良いって言われたけれど、荷物になるし盗賊に目を付けられたくないもの。
検問所に預けていた馬車はちゃんと王宮に来てくれていた。有難い。
私は馬車に乗り込み宿屋を探す。今人生で初宿屋よ!王宮から少し離れた所で良さそうな宿を見つけたので馬車を停めて宿に入る。
宿に入り、美味しい夕食を堪能して大興奮だったわ。ベッドもフカフカで宿を満喫しようと思っていたけれど、ベッドに入って秒で寝落ちしてしまったわ。疲れていたのね。
翌日は王都観光も兼ねて仕事が出来る場所を探すが、やはり王都の教会は治療の出来る神父やシスターが沢山居て、平民街には町医者もいるようなので私の入る隙間は無い。
治療出来る人が居ない村や街を教会で聞いてみるかな。私は王都で一番大きな教会に歩いて向かった。
王都の教会は流石と言っても良いほど大きな建物で荘厳な佇まいだわ。
教会に入ると一面に広がるステンドグラスに心奪われる。
……凄いわ。
教会には信者や旅行者もいるみたい。観光スポットなのかも。私は祈りの間にいた1人の神父に尋ねる。
「すみません。少しお尋ねしたいのですが、私、今治療師として旅をしながら治療を行っているのですが、治癒師が居なくて困っている村や街はありますか?王都から街や村を回って行こうと考えていて、良ければ教えて頂きたいのです」
「それはそれは、誠に有難い事です。治療を行う事の出来る者は数が少ないですから本当に助かります。少しお待ちください」
神父はそう言ってその場を離れたが、しばらくして紙を片手に戻ってきた。
「お待たせしました。旅をなさっているのですよね。この近くではサラン村ですね。サラン村から街に向かう道の途中では……」
治療師の居ない村や街を教えて貰い、ルートまで教えて貰ったわ。
神父の話からすると、王都では見習いも含めて治療を行う者は数がいるものの、王都から出たがらないらしく、小さな村や王都から離れた街では治療を行う者が居ないのが殆どで周って貰えると助かるらしい。
良かった。邪険にされるのではないかとちょっと思っていたの。
私は今後も治療師として食べていくには困らなさそう。私は神父にお礼を言って教会を後にした。
さて、王都ではあまり商売は出来ないだろうから買い物だけして王都を出るかな。商店通りを歩いて私は食料品や幾つかの魔道具を購入して馬車に戻る。
私が買った魔道具は魔物避け用の物と防犯用の結界。杭はあるんだけど、宿泊用で馬車が止まらないと使えないんだよね。
でも、新しく買った魔道具は馬車を指定しての物だから移動中の襲撃にも対応してるの。
そして魔道具は魔石の魔力が切れると使えなくなるのだけれど、私は本来は魔法使いなので無くなってら補充出来るし、少し高いけれど便利な魔道具。
あ、別に魔道具が無くても私は使えるわよ。
ただ襲撃に対して守りながら攻撃するのは面倒なだけ。馬車に戻って物を仕舞うと馬車を出発させる。
王都の検問所に次の村に出る事を話し、身分証を提示するとまたしても止められた。
……解せぬ。
暫く検問所の一室で座っていると、後ろから声を掛けられた。
「ソフィ、お待たせ。じゃぁ、行こうか」
そこには平民の服を着たルイ様と大荷物を背負った護衛の人だった。
「ルイ様、どういう事でしょうか?」
「ソフィ1人の旅は危険だろう?僕は攻撃魔法を使えるし、そこにいるオスカーは剣で右に出る者はいないんだよ。僕も修行の為に色々な所に出かけていたしね」
何故私が王族を連れて行かなきゃ行けないのよ。
「ルイ様。意味が分かりません。お帰り下さい」
「ほらっ、馬車に荷物も積んだし、後は出発するだけだよ。これは王命でもあるんだ。諦めて」
王命!?何が起こった??
「とにかく、出発しよう。馬車内で話すとするよ」
いえいえ、今ここで話しても大丈夫ですが!?
私は混乱しながらもルイ様達を馬車に乗せないようにしているのにルイ様もオスカー様も平然と馬車に乗り込んでいるわ。
私の馬車はカラカラとオスカー様が御者で私とルイ様を乗せて出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます