第6話 また明日
『お、タツヤもう行くのか。もう少しマンガ読みたいんだが』
タツヤは約束の時間にもなっていないにも関わらず、ベットから起き上がった。
「本当にうるさいな..いいだろ、別に」
『へえ〜、ぐへへへ』
「笑い方、キモい」
早足でエレベーターの元へ向かう。ボタンを確認のため二回押して、少し横にずれて待つ。この時代は子供まで教育が行きわっているようだ。非常にいい世界になった。本当に。
俺が子供への高度な教育を進言したときは国家反逆罪に問われたというのに。
やがて数字が3階を示す。どうやら誰も乗っていなかったようだ。一階まで降りるとそのまま中庭に直行する。辺りを見渡す。すでにベンチにミコトが座っていた。
真っ直ぐ話しかけにいく。
「よ、よう美琴」
「あ、意外と早かったですね。達也さん」
タツヤは隣に腰を下ろして、話題を探る。
「えーっと、いい天気だな」
「そうですねえ。冬のこの透き通ったような空気が大好きなんですよ」
なんなんだ?こいつらの教育いかれてんのか?とても子供がするような発言じゃねえだろ、これ。
「でもちょっと霧がかったような感じ、しない?確かに透き通ってはいるんだけど、なんだか綺麗な川の水に光の反射が混じっているような、そんな感じの」
もうだめだ、ついていけん。分からんし。やっぱこの国の教育が突出してすごいのか?てか待った、この国ってなんていうんだ。
「あ、分かりますそれ!その表現いいですね。いただいちゃいました」
分かるのかよ。そしていただくな、常人にはわからん。
天気からよくここまで話題膨らむなあ。
俺もあいつと喋る時はこんなだったか、と思い出してしまう。でもまだ俺たちの方がガキみたいなアホっぽい会話してた。
やがて病院の尖った屋根が赤く染まり始める。
暇だぁ。こいつのためとは思ったがここまで話すとは。何をそんなに話すことがあるかね。
タツヤが寝ないと俺の意識も持ち続けるこの仕様のせいで寝ることもできない。
「ねえ、多重人格って信じる?」
お?俺の話題かな。
「信じるも何も、医学的に証明されいてませんでしたっけ?」
「じゃあ、表向きには人格は変わらないけど、その人の中で存在して話せる人格ってあると思う?しかも過去持ちの」
「えらく詳細な条件ですね..うーん。あるんじゃないですか?前世の記憶的な何かで」
前世?この子、もしかしたら。
『タツヤ、そのことについてもっと詳しく聞いてくれ』
「え?あ、えっと、つまりどう言うこと?」
「すみません、また今度にしませんか?もうすぐ帰らないと看護師さんに怒られちゃいますから」
えぇ。
「あ、そうだな。ごめん..」
「いえ、では、また明日!」
「う、うんまた」
また明日、かあ。
『やったなタツヤ、さりげなく明日をゲットだ』
「うるさい」
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