サイバーパンク及びSF風短編集

ウミウシは良いぞ

第1夜 駅構内。男


僅かばかりの黙りこくった

”機械とも人間とも言えない存在”を

ぬぐい去るように全部乗せて

暗い列車は出て行った。


非常口の緑のサインだけが光る駅構内。


すでに売店は片づけられ

ツバメの巣さえからっぽの

がらんとした夜のプラットホーム。


夜だ。


電灯ネオンライトが消え

アンドロイドの駅員ものこらず姿を消した。


なぜか私ひとりがそこにいる

暗くぬるい風が吹いてきて

まっくらなホームの埃が舞いあがる。


沈黙のメトロポリタン。


列車はもう二度と来ないのだ。

いくら待ってもむだなのだ

永久に来ないのだ。

それを私は知っている。

知っていて立ち去れない。


このイカれた世界では

死を知っておく必要があるのだ。


死よりも嫌な空虚のなかに私は立っている。


相も変らぬレールが刃物のように光っている

しかし列車はもはや来ないのであるから

レールに身を投げて死ぬことはできない。


誰もいない、忘れられた時間。

プラットフォームの中。

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