カクヨム×ツクール企画用短編『SNSの怪異』
mk-2
第1話 開始
「――――?」
――薄暗い空間で、俺は目を覚ました。
何処だ? ここは……?
起き上がり辺りを見回すと、青白い灯が壁に等間隔で掛けられ、不気味な光を放っていて、床は冷たく固い。
酒樽や空っぽの宝箱、豪奢な壁や天井の装飾……まるでRPGの西洋の城だ。
俺は自分の身体を触ってみたが、手荷物ひとつ無い――――いや、あった。携帯電話のような
ここが何処なのか。帰るにはどうすればいいのか。この端末だけが頼りだ――――俺は慌てて起動してみた。
「えっ……」
俺は驚き、思わず声が出た。
何故なら、端末にはほとんどアプリも入ってなかったし、GPSもWi-Fiもテザリングも機能していなかった。
唯一、機能しているのは――――世界的に有名な、ひとつ140文字以内であらゆる情報を発信・拡散できるSNSアプリだけだった。
それでも、無いよりはマシ……SNSアプリを起動し、情報を集めよう。
画面を見遣ると、早速フォローしているアカウントから様々な情報が流れて来る。
「――ん……?」
起動するなり、様々なリプライが飛び込んでくる。
『早くそこから脱出しろ!!』
『いきなりラスボスっぽい城のダンジョンかよ。終わったなこりゃ』
『まだワンチャンスあるって』
『いいから急げって、マジで死ぬぞこいつ』
――脱出? ワンチャンス? 一体何のことだ?
内心狼狽する俺を追い込むように、次のリプライが背筋を凍り付かせた――
『早く逃げないと、SNSの魔物に喰い殺されちゃうよ!!』
――SNSの魔物!?
その辺りから、タイムラインの画面がおかしい。
まるでネズミか何かが食い荒らすように、古いリプライが――――歯型が付いて、喰われていっている!?
――その瞬間。とてつもなく嫌な気配を感じ、俺は振り返った。
――――ホラーゲームか何かで出て来るような巨大な化け物が、大口を開けて俺に向かってくる!!
「うわああああ!?」
俺は、堪らず逃げた。
だが、一体何処へ逃げれば……どうすれば帰れるんだ!?
走って逃げている最中にも、アプリから通知音がする――
『やべえ魔物来たオワタ/(^o^)\』
『お前ら真剣にやれって。マジで終わっちまうだろ』
『魔物思ってたより恐ええええwww』
――くそっ。他人事だと思って気楽に呟きやがって…………まるでゲーム実況でも観ている視聴者のような無責任なリプライに、俺は内心悪態をつく。
その無数のリプライも、後から後から古いものから喰われて無くなっていく。
――もしかして……この化け物に喰われることと関係があるのか?
そう思いかけた時、ひとつの新しいリプライが目に留まった――――
『そこの階段を下りて
――階層を切り換える? そうすれば、魔物から逃げ切れるのか?
確かに、目の前の通路の端に下り階段が見える。後ろにはもうあの魔物とやらしかいない。
俺は藁にも縋る想いで、目の前の階段を全力で下りた――――
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「――はあっ……はあっ……はあっ…………」
階段を下り切ると、不思議と魔物は追って来ず、気配すら消えた。
辺りを見回すと――――西洋の城のはずが一変――一面、見渡す限りの大草原だった。地下に潜ったはずなのに、青空が広がっている。
何なんだ一体? ここは、どういう構造してるんだ?
先ほど下ったばかりの階段の上へ向かって恐る恐る手を伸ばしてみると――――階段が切れてる所から手が消えたり現れたりしている。まるで……昔のRPGの、カオスな、場所も時代もごちゃ混ぜになっているダンジョンみたいだ。
『いいから早く進めって』
『こりゃ草だな大草原www』
『wwwwwww←大草原』
『草に草生やすなw』
『おまいう』
『あーお前ら邪魔ばかりすんな本当に垢BANされるかもしれんぞ』
――俺が必死で逃げている間にも、不快なリプライは送り続けられている。
悪態をついている暇は無い。何とかこの謎の空間から脱出しなくては…………俺はあてもなく、取り敢えず草原を歩き出した。
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