手術の順番

 病室のベッドの上で震える体を抑えていると、隣のベッドの老人が『こんにちは』と声をかけてきた。


『緊張しますか?』

『……ええ。手術することになったんです』

『それはそれは』

『この間受けた健康診断で引っかかりましてね。右肺を切除することになりました』

『それはお気の毒に』

『全くです。病気というのは恐ろしいですね。痛みも何も感じてないのに、密かに蝕まれていたなんて驚きですよ。二十代だから大したことないだろうと侮っていました』

『検査して正解でしたな』

『はい。ところで、失礼ですがあなたのご病気は?』

『私も肺を。長いこと待たされましたが、ようやく手術です。といっても、切除ではなく移植ですがね』

『ドナーが見つかったんですか。それはよかったですね。手術は今日ですか?』

『わかりませんが近々。確実なのは、だということですね』

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