第1話 プロローグ

 「お兄様、おはようございます。」


 「ああ、おはよう。」


 ある朝いつもの様に妹からの挨拶を受けた。それに対し返答する。


 「お兄ちゃん、お姉ちゃんおはよう。」


 「兄貴おはよう。」


 弟達からも挨拶を受ける。そんな日常の一場面。


 僕の名前は太郎。鏡原(かがみはら)家の長男だ。弟、妹がいて順番に次男が次郎、長女の三花みか、3男の三郎の4人兄弟だ。


年齢は各々3歳ずつ離れている。兄弟中は良好であり、弟や妹たちを大層可愛がっている。


そして洗面所で顔を洗い終わり皆でダイニングに向かいお父さん、お母さんと家族6人で朝食をとった。


 食べ終わると、食器と箸を流し台に持っていく。お母さんと妹が洗い、僕達はふきんで食器類をふいた。


 「みんな、今日もありがとうね。」


 お母さんが僕達に感謝の言葉をかけた。


 「いえ、当たり前の事なので気にしないでください。」


 僕はいつもの様に返答した。


 「では、会社に行ってくる。」


 「「「「「いってらっしゃい(ませ)!」」」」」


 お父さんが出勤した後、僕達も学校に向かった。


 僕は小学6年で12歳。弟、妹がそれぞれ9歳、6歳、3歳。


そして両親は共に35歳で聞くところによると同級生だったみたい。いわゆる幼馴染でご近所さんだった様で、家族ぐるみで付き合いをしていたらしい。ちなみに祖父母は4人とも元気にしている。


 学校から帰宅すると友達が遊びに来て、弟や妹の相手をしてくれている。


友人に言わせると、妹目当てで遊びに来ているらしい。自分でも思うが三花は6歳の幼稚園生であるはずだが時々大人びた言動としぐさ、対応をしてくる事がある。


そして簡単だがお菓子を作り、お客さんに提供している。味の評判がとても良く、本人の容姿も抜群だからだ。


 漆黒しっこくのロングヘアーで、時によりポニーテール、三つ編み、リボン、カチューシャ、ツインテール等その日に応じて髪型が違い、見る者の目を楽しませてくれる。


また、目もぱっちりしていて均整の取れた顔立ち、身体つきをしている。まさに美少女と言っても過言ではないと思う。


肌の手入れも抜群でつやつやな肌とうるおいを持ち石鹸のいい香りを振りまいており、いつもシャンプーやリンスの匂いが漂い思春期の僕達の心を惑わせてくるのだが本人は自覚してないようだ。


 性格も良く、いろいろな物事によく気付いて接してくるので、僕も含めて友達は三花の事を同い年、もしくは年上のお姉さんの様に錯覚することがたまにある。6年も年が離れているにも関わらず・・・。


 中には三花を世話している内に、本当の妹みたく思っている友達もいるらしい。


あと単純にファンになっている子もいるみたいだ。大きくなったら彼女にしたい候補の一員だ。


僕は兄として三花を守らなければならないと自覚している。


 それというのも、本人は気付いていない様だが家族一緒に街中を歩いていると通りすがりの人が三花を見て振り返る様を何度も目にした。とにかく自慢の妹であるのは間違いない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 私の名前は鏡原三花かがみはらみか。


4歳の頃に熱にうなされ寝込んでいたら、唐突に何やら色々な記憶が蘇ってきた。


どうやら前世は成人男性だったらしく、独身を貫いていて両親に心配かけさせていたみたいだ。


 今世ではまた同じ両親の元に産まれ、今回は過去に流産したとされる兄弟が生を受けており、


前世では長男として1番目に産まれ生活していたが、今世では3番目の長女として生を受けた。


将来は幸せな家庭を築きたいと思う。


 記憶を取り戻してから2年余り。生活していて分かった事はいわゆる私は逆行転生と呼ばれる現象に該当していて、世界の流れは前世とほとんど変わらなかった。


すなわち、こういう事に気付いたのは何気なくTVを観ていて、『懐かしいな。』と思いつつ視聴しているとこの後の展開はこうだったな。ああだったな。と考えてるとまさにその通りになっていたからだ。


始めは単なる偶然だと思っていたが、何度も繰り返されていると仮定が現実味を帯びてくる。


俗に言うタイムリープ。タイムスリップ。もろもろ。だが私はこの世界で産まれ、4歳までの記憶もある。


 そして思い出された前世の45歳男性の記憶。それが一つに混ざり合い、女子として生活をしている。


まずは情報収集に取り組み、調べた結果前世と同じTV番組、漫画、アニメその他もろもろが放映、出版されていた。懸念事項として良い事もあれば悪い事も起こる可能性があると結論付けた。


不幸な事柄は無いに越したことはないと願うばかりである。


 普段は元男だった自分が日常生活をして、時々女人格と話し合い三花ちゃんとして行動していた。


私が『僕』で大人だった頃は既に絶版になっている書籍、映像、雑貨類、その他もろもろが豊富に存在していた。兄達が読んでいる少年誌、いとこが所持していた漫画等の書籍類をむさぼる様に読んで色々な知識を吸収していった。


 せっかくの経験だからと、興味はあったけどなかなか手が出せずじまいだったお菓子作りに挑戦し、


悪戦苦闘しながらも家族達から「美味しい。美味しい。」と褒められるまで上達した。


 また、ファッションにも気を使い質素ながらも服装に注意して過ごしていった。女の子人格はもっとおしゃれがしたいと言っていたが、男人格の僕は「質素ながらも清楚な服装がいいんだよ。」


とたしなめてその服装で家族と共に街中に出かけた。


すると案の定、三花ちゃんの容姿とマッチした服装を見ると通りすがりの人達が振り返りこちらを見ていた。その視線を感じたが、何でもないという顔を作りすましていたが内心では喜んでいた。


 服装というと、この時代の女性の体操服と言えばブルマ着用が当たり前であり、パンチラ防止の為親にねだり複数枚購入してもらい毎日とっかえひっかえ履いていた。


ショーツだけの時に比べブルマを履くと下半身を守られている感覚になるのと生地のお陰で暖かく手放せなくなった。


また女児用水着でなく早めの内にスクール水着に慣れようとしていた。まあ、スク水も女児用水着も気分によって着こなしていた。


 風呂は家族全員で入浴している。


兄弟揃って身体の流しっこをしていた。私の背中を洗われ、次は前面という段階になるといつも母親が洗ってくれた。兄2人は私の身体を洗いたさそうにしていたが、弟はまだ分からないようであった。


なんとなくだが洗いたい気持ちはわかる。だがまだ早すぎるという事で妹磨き隊は却下されている。


なんだかんだで入浴が終わると後は就寝の時間だ。


 ところで・・・。


実は私は特殊能力を保持している。それは『セーブ&ロード、設定』という事柄。


男人格が前世の時に授かった能力らしく、以前会得した時の話を聞いたがにわかに信じられない物だった。


だからこそ、その時の話を鮮明に覚えていた。

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