第12話 死闘繰り広げました

 勢いよく、斧が迫る。

 それを後ろに跳んでかわす。


 いきなりなんて卑怯でしょっ。

 あのまま動けなかったらミンチだよっ。


「おらぁっ。もういっちょう。」


 縦に来たので、横にかわす。

 地面に斧が叩きつけられると地面が割れた。


「どうした? 避けるだけか?」


 顔を隠しているけど分かる。

 絶対、ニヤっと笑っているよね。

 ムカついた。


にゃっ。


 被り物の何かに、突っ込んだ。

 そんな俺に斧が迫る。


「まずは、チビっころか。こいやっ。」


 猫です。

 思ったより遅いっ。


 斧を避けると点が浮かび上がった。

 斧、お腹の短いルート。

 斧の点を蹴りあげて、お腹を全力で蹴り飛ばす。


「効かねぇ。なっ。」


 お腹をつきだして、押し返された。

 あれは無理だね。

 手応えを感じないもん。


「おらぁっ。」


 再び斧が来た。

 とっさにかわす。

 かわるけど、肝が冷えるね。


「そっちの女はどうしたっ。」

「分かっているっ。」


 斬りかかるが、手応えがない。

 まじで? 刃物を弾くの?

 全く斬れないのはおかしいでしょ。


「効かねぇ。そんなもんかっ。」


 斧を何度も振り回し始めた。

 何とか、かわしていくが攻めれない。


 攻めたところでだけど。

 攻撃が通じないなら意味がないか。


「にゃんすけっ。行けるか。」


にゃあーあ。


 無理でしょ。

 どう考えても。

 せめて、隙が作ればっ。


「おらおらっ。もっとよけろぉっ!」

「ちぃっ。これ以上はっきついっ。」


 樹に隠れる。無理か。

 あっという間に切られてしまう。

 他に何か手段はないのか。

 樹? もしかして。


「なんだぁ? チビっころ。死にてぇのかっ。」


 近付いてうろちょろ。

 敵を煽る。


 ほらっ。こっちだよっ。

 よし、来たっ。


「死ねやぁ。」


 死なんっ。

 樹でガード。


「無駄って分かんねぇのかっ!」


 他の樹に点が浮かぶ。

 更に他の樹に。

 三つの樹にポイントダッシュ。

 上に上がっていく。

 そして、倒れる樹に向かって飛び込んだ。


 無駄かどうか思い知れっ。


「なっ。」


 倒れる樹に飛び蹴り。

 樹の重力と、蹴りの威力の合わせ技。


 しかし、腕で防がれる。


「いいぜぇ。今のは効いたなぁ。」


 嘘つけっ。

 手応えが全然ないっ。


「おらぁっ。」


 斧を振って樹を粉砕。

 直前で離脱。


「今のでも駄目なのか。」

「考えは、良かったぜ。でも、浅知恵だなぁっ。」


 また、斧を振り回し始めた。

 また、かわすだけになっていく。


「にゃんすけばかりには頼れないなっ。」


 フィーは、カンテラを掴んで腰から外す。

 そして、二回振った。

 周囲に火の塊が浮かぶ。


 そういう事か。

 なら、任せよう。


「何する気だ?」

「こうするっ。はっ。」


 カンテラを振って火の塊を飛ばす。

 しかし、腕で防がれる。

 でも、それで良い。


「小細工が効くかっ!」


 相手は、フィーを見ている

 足元注意っ。


 滑り込んでジャンプ。

 お腹、顎にポイントダッシュ。

 最後に顎を蹴上げる。


「うごっ。くあぁっ。」


 人間の急所の一つだ。

 今度こそ、思い知れっ。


「効く、なぁっ!」

「危ない、にゃんすけっ!」


 相手は、間違いなく仰け反った。

 しかし、直ぐに体勢を戻す。

 その勢いを利用して斧を振る。


 ちょっ。着地の硬直で動けないっ。

 死んだっ。

 って、あれ。足元に大きな点が。


「死ねぇっ!」

「にゃんすけっ!」


 ズドンと地面が割れる。

 でも、そこに自分はいない。

 直撃する寸前、大きな点を蹴っていたのだ。


 今、どうなったの?

 大きな点が出て、気付いたら回避してた。


「あぁっ? 今のはなんだぁ?」

「にゃんすけが一瞬で?」


 二人にも分からないらしい。

 一瞬でって言ってたけど。


「はっ。まだ何か隠してんのか。おもしれぇっ。やってみろよぉっ!」


 仕方ない。一か八かだ。

 見たいんなら見せてやるよっ。


 相手に向かってダッシュ。

 迫る斧はかわす。

 そして、斧、お腹をポイントダッシュ。

 更に、地面、樹にポイントダッシュ。

 かろうじて残った樹をポイントダッシュで渡っていく。


 やっぱりだ。ポイントダッシュは、繋げられる。

 しかも、その度点が大きくなっていく。

 

「何だよ。ただ飛んでるだけかよっ。」


 こっちに向かって斧を振って来たか。

 しかし、当たる気がしないな。

 むしろ、利用させて貰おう。


 斧を使ってポイントダッシュ。

 相手の体も使ってポイントダッシュ。

 もはや、自分でもどうなっているか分からない。


「しつけぇぞっ!」


 そりゃあそうだ。

 相当目障りだろうな。

 じゃあ、そろそろ行くか。


 最後に大きく踏み込む。

 その音に相手が気付く。

 こっちを見て、斧を振りかぶった。


「馬鹿がっ。バレバレだっ。」


 嘘だろっ。

 どんだけ耳が良いんだ。


「来る場所が分かれば問題ねぇっ。」

「それはどうかな。」

「は?」


 相手が、声がした方に反応する。

 その直後、顔に火の塊が直撃。

 視界が塞がる。


「今だっ。」


にゃん。


 ナイスっ。

 じゃあ、遠慮なく。

 ドロップキックっ。


 両足の蹴りが迫る。

 しかし、それは空を切った。

 直前でかわされたのだ。


「見えなくてもかわすぐらいっ。えっ。」


 視界が晴れたらしく、こっちを見る。

 その前の光景に驚愕している。

 それもそのはず、避けたはずの俺がフィーの鞘に着地をしているからだ。

 フィーが両手で鞘を掴んだ。


「行くぞっ。にゃんすけっ。」


にゃん。


 鞘を最後にポイントダッシュ。

 フィーも鞘を振った事により更に加速。

 今度こそ、ドロップキック。

 

「くそがぁっ。」

 

 それでも、相手は斧で防いだがすぐにへし折れた。

 そのまま相手の顎に顎に衝突。

 その勢いで、相手は吹き飛んだ。


にゃん。


 華麗に着地。

 ちょっと酔った。

 気持ち悪い。


「にゃ、にゃんすけ。こっち。」


 どうしたの。こっちは今頭が。

 って、あぁっ。

 なんだこれっ。


 フィーに言われ後ろを向くと、そこにある光景に驚いた。

 相手は気を失って泡を吹いている。

 問題はそこじゃない。

 相手の被り物が取れて、顔が見えている。


「これって、コブリンか。」


 そうだね。

 ちょっといかついけど。

 でも、こいつ。


「喋ってたよな。」


にゃん。


 確かに喋っていた。

 ゴブリンだよ?

 普通喋んないよね。


「どうなってるんだ。」


 こっちが聞きたいよ。

 本当に何が起こってるんだ。


「仕方ない。今のうちに止めをさそ。」

「こっちから音がしたが何事だ?」


 誰か来たようなので、とっさに隠れた。

 すると、沢山のゴブリンをつれた、二人の被り物をした何かが来た。

 恐らく、あいつらもゴブリンだろう。


「これは、ガリアがやったのか。」

「またこいつか。いい加減にしろよ。」

「いや、誰かと戦った可能性があるんじゃ。」

「それはねぇよ。何の為に大蛇様から頂いた戦闘力を、こいつに殆ど与えたと思ってんだ?」

「それもそうだな。まったく、大蛇様がお目覚めになるまで騒ぐなってあれほど言ったのに。」

「で、どうするよ。」

「仕方ない。持ち帰ろう。お前達こいつを運べ。」


 ゴブリン達が倒れたゴブリンを運んでいく。

 その後を、被り物のゴブリンが続く。

 しばらくすると、静寂になった。


「今の聞いたか?」


にゃん。


 あれだけ全部話してくれるとは。

 お陰で、大半の事が分かったね。


「大蛇はいる。しかし、まだ寝たまま。その大蛇から力を受けたゴブリン達が支配している。そこまでは分かったが、なら、村人は?」


 それもそうだ。

 村人をさらった理由が分からない。


「結局、アジトに行くしか無いって事か。」


 そうなるね。

 と、なると、問題は場所だけど。


「あいつらが来た方にある。って事でいいんだよな。」


にゃん。


 それしか考えられない。

 今度は、こっちの事に気付いて無さそうだし追って良いんじゃない?


「行こう。元々、それが目的なんだ。」


 その通り。

 百聞は一見に如かず。

 考えるより、直接見ろだね。


 ゴブリンの群れが向かった先に向かって歩いていく。

 今度は、こっそりと。

 念のためね。


「それにしても強かった。止めをさせなかったのが心残りだ。」


 つまりまた戦うって事だ。

 嫌だなぁ。


「というか、にゃんすけ。あんな隠し技を持ってたなんだな。」


にゃあーあ。


 あんなの、自分も知らなかったよ?

 ホントだよ?

 あっ、思い出したら気持ち悪く。


「この調子で頼んだぞ?」


 あなたもね。

 今度は、ちゃんと切れ味が良いのを選んでね?


「っと。そろそろ抜けるぞ。」


 そんな話をしていたら林を抜けた。

 林の端から、先を見渡す。

 ゴブリンだ。

 深い横穴の両端に立っている。


「警備か。守るように見張っているという事は、あの先にあるのだな。」


 わざわざ場所を教えて貰ってありがとう。

 守るつもりが場所を教える事になるなんてね。

 でも、どうやって入ろう。


「ちょっと驚かしてやるか。」


 何か考えがあるのか。

 で、何すんの?

 

 フィーが、カンテラを持って振る。

 火の玉が浮かんだ?


ふぎゃ?


 ゴブリンが火の玉に気付いたけど。

 でも、様子を伺っているらしい。


ふぎゃ。ふぎゃあ。


ふぎゃ?


 たぶんだけど。

 なんだあれ。どうしよう。

 さぁ?

 って感じだろうね。

 で、ここからどうすんの?


「はっ。」


 カンテラを振って火の玉を飛ばした。

 その火の玉は、ゴブリンの顔に。


ふぎゃああっ。


「今だっ。」


 顔を覆っている間に中へ。

 上手くいったね。


「よし、このまま奥へ。」


 横穴を走って抜ける。

 すると、明かりが。

 そのまま、明かりの元へ。


「なっ。なんだこれはっ。」


にゃ、にゃっ。


 その先にあったのは大きな建物。

 まるで、神殿のような。

 いや、間違いない。これは、神殿だ。


 目の前にある神殿に圧倒されしばらく固まっていた。

 何でこんな場所に。

 しかし、答えは返ってこない。

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