第9話 お年頃なんです……
自分の身体を取り戻したロクサスはマーリンに大声で主張する。
「
〈えぇ~! まぁ、いいか~ロクサス君が初めて身体を重ねた女性は私になったわけだし〉
「誤解しか生まない言い方はやめてください……というか、貴方のせいでミーナが! ミーナが!」
「ロクサス様……うへへ……」
なおもミーナはロクサスの腕に抱かれたまま、幸せそうな表情で気絶し鼻血を流している。
〈これで少しくらいは自分の子孫に良い思いをさせてあげられたかな~〉
「何を訳の分からないこと言ってるんですか! 一体、何をしたんですか!? 鼻から血も出ちゃってますし!」
ミーナの状態が理解できず心配しているロクサスに、ヒミコは呆れた様子でため息を吐く。
〈じゃあ、憑依してマーリンの治癒魔法を使ってやれば良かろう。それで鼻血は止まるはずじゃ〉
「で、でも俺……魔法なんて使ったことないですよ!?」
〈大丈夫じゃ、憑依すれば英霊と同じように能力を使用できる。ほれ、やってみい〉
ロクサスはヒミコの言う通り、身体の中に居るマーリンの英霊を憑依してみた。
――直後、魔法の使い方がまるで今までずっと使ってきていたかのように自然と脳裏に浮かぶ。
(凄い……! これが憑依!)
「……地の精霊よ、母なる大地よ、傷つきしこの者に癒しの力を……【ヒール】!」
ロクサスが詠唱し、手をかざすと――ミーナの鼻血が止まった。
「……す、凄い! 本当に僕にも魔法が使えました! ミーナの傷を治せましたよ!」
そんな様子を見て、霊体のマーリンはロクサスの中で首をかしげた。
〈……初級回復魔法なんか、私の能力があればわざわざ詠唱しなくても使えたよね? 何で詠唱したの?〉
そう言われて、ロクサスはダラダラと冷や汗を流す。
「え、えっと……それはその……は、初めての魔法でしたし……」
母親のような優しい表情でヒミコはロクサスのフォローを入れる。
〈マーリン、こやつはその……『男の子』なんじゃ。しかも年頃のな。……察してやれ〉
〈えー! 全然分からない! なんでわざわざ詠唱したの!? ねぇ、なんで~?〉
純粋な表情でしつこく尋ねるマーリンに、ロクサスは顔を真っ赤にした。
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