第14話 追手
「大司教猊下! 独自で集めました召喚者たちは金髪ではありませぬが、あの根暗ナメクジよりもはるかに活き活きとしておりますぞ!」
「おお! やはりあの根暗野郎だけがイレギュラーであったのだ! 貴様は奴等を飼いならしておけ」
「さっそく修練をさせております。筋が良いようで既にレベル3へ到達しているようです」
「念のため、
「え!? て、天輪衆! わ、分かりましたすぐに手配します!」
甘ったるい臭いが立ち込める乱痴気部屋の奥では、上半身裸で突き出た腹を撫でながら大司教はグラスの酒を飲み干し下卑た笑いを漏らすのだった。
「あの聖騎士たちを最初に手配した時点で盤石だと思っていたが、天輪衆が出たとなれば貴様の命運もこれまでだ。例え
テーブルの上の酒や酒瓶を右手で薙ぎ払ないながらビンやグラスが割れる音に給仕の女性が駆けつけるが……
「ひゃぁ!」
大司教の放つ禍々しい気配に恐怖の呻きを漏らし逃げようともがくも、荒い息を吐きながら首を掴み苦しむ様子をかぐわしい香りでも嗜むように凝視し力を込めていく。
「ぐっがっ……がっ……!」
必死に腕を振り払おうとするも、ついに力尽きた給仕係の女性はどさりと床へボロ布のように崩れ落ちる。
大司教であったその手からは鋭い爪がにゅるにゅると伸び始めると、女性の腹を引き裂き臓腑を喰らい始めていく。
「くくく、やはり若い女の臓物はうまいものだ。たまにはこうして主食を食わないと力が出ぬというものよ」
◇◇◇
もちろん馬車の中で俺は寝たふりを徹底している。
ラナのような比較的話やすい相手でも、俺にとっては会話が負担であることに変わりはない。
そういうときこの子は食べ物の歌をずーっと歌い続けているのでお気楽というか、かわいげというか、つかみどころがない。
寝たふりのまま俺は脳内のUIを活用し、新たに装備した黒い篭手の性能を確認してみることにする。
< 装備枠を表示 >
武器:スチールダガー
防具:訓練用ライトレザーアーマー
:閃影の篭手
:レザーブーツ
どこか未来的なデザインも中二心をそそる。してその機能はいかほどのもの?
<閃影の篭手>
タイムスタンプの判定が不可能なため由来、製造時期等一切不明。
機能: 影形術の範囲拡大と効果増幅効果
封印機能が存在するため、影形術の経験を吸わせることで解除が可能。
へぇ、つまり影形術を使い続ければいいのか。
なら地道に特訓したほうがいいね。
ただ得意になって影形術でシャドウニードルを打ち続けると魔力が尽きるので、ほどほどにしないといけない。
ダガー一本で戦うとしたら俺は盗賊相手に瞬殺される自信があるし、一応死にたくないから何パターンか戦闘スタイルを考えてはいるけど腕力ないしなぁ。
と脳内トークではやたら饒舌な陰キャの俺が突然停車した揺れで起きたふりをし目を開けると、御者のおじさんが悲鳴を上げて馬車から逃げ出していったところだ。
「え?」
「カゲミツ様戦闘準備を、ここは絶対に私がお守りしてみせます」
いつものバカモードじゃない、真面目モード!? ラナの目が真剣そのもので、殺気立っている。
はっと目の前を見ると、3人の真っ白なフードローブを纏った男が剣についた血を振り払っていたところだ。目の前には首を切り落とされた馬が倒れており切断面から噴き出す血が街道に赤い染みを描いている。
ラナと一緒に荷台から飛び降りた俺は、あの白いフードローブの男たちが薄ら笑いを浮かべていることに鳥肌が立った。
なんで……どうして馬を殺すなんて真似ができるんだ?
かわいそうに……
「あなた方はいったい何者です!!」「待てラナ」
ちょうど俺たちの背後を塞ぐようにまた白いフードの男たちが2人。
くそう逃げようと思ったのに!
「確実に殺せとの命令だ。どうやったかは知らぬがドラゴンを退散させるとは、見た目では計れぬほどの才覚があるというのか」
挟み撃ちにした男たちは、中央でフードを外している顔半分に火傷の痕が残る男の発言を黙ってきいていた。
「カゲミツ様! 私が奴等と戦っている間に「待ってラナ、ねえ知りたくない? ドラゴンを消し去った方法」
「なに!?」
少しずつ距離を詰めてきた男たちの足が止まる。
周囲は林を突っ切るように整備された街道で、人の気配はない。
「はったりにしては中々おもしろい話題をふるものだ。ようし、話せばその小娘だけは助けてやろう」
「え? 俺を助けてよ、ラナはどうなってもいいって言ってるんだし」
「おいお前! 女を差し出して自分だけ生き残ろうとしてるなんて、こんなひでえ奴初めて見たぜ!!」
「え?え? え?」
いきなり生贄役にさせられたラナはただ戸惑い混乱するばかり。
カシュンカシュン……
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