第12話 ドラゴン・コンタクト
影形術で薄い遮光板を……ん? そうか!
試しに竜の眼球を想定し、影でコンタクトレンズのような形状を作ってみるが、真っ黒であまり薄くならないな。
影の密度を落とすってことが俺にはまだできそうにないのか。
ふと、その思いに呼応したように白竜がシャドウマスクの下からぽろりと何かをこぼした。
最初は汗かと思ったが、地面に接した段階で固形状の透明な水晶玉のようになってしまう。
< 鑑定スキル……【 竜の涙 】 >
これを利用できれば、町の人やドラゴンを両方救うチャンスだ。しかも荒事なしで解決できる。
ふつふつと湧き上がる自分ごときでも何か人の役に立てるのではという思い、悪くはなかった。
竜の涙を手に取ると、影形術で補強した短剣で切り裂きレンズ状に切り出してみる。
器用値が高いのでこういう作業はお手のものだ。
その要領で竜の涙を薄く伸ばし、影形術で作ったコンタクトをさらに薄く延ばしてから竜の涙の型に乗せてみる。
するとうまい具合に透けており、まるで最初からそうすべきであったかのように二つは融合し、いわゆるサングラスぽい効果を持つドラゴンコンタクトが完成した。
「白竜さん、片目だけシャドウマスクを外させてください。試したいことがあるんです」唐突な俺の頼みだが、闇を提供してくれた恩人なので素直に了承してくれる。
シャドウマスクを外すと辛そうに呻くが、ラナに手伝ってもらいながら巨大な目にドラゴンコンタクトをするりと滑り込ませる。やはり鱗はすべすべと一種の宝石のような高貴さを感じるほどだ。
『な、何だこれは!? 眩しくない! 眩しくないぞ! 人間よ、なんと感謝すればよいのだ』
「あの元々は人間がやったことみたいだからその――もう一個がんばって作ります」
『た、頼む後生じゃ!』
白竜の必死の懇願に応えるべく、ラナにも手伝ってもらいながら竜の涙を切り出し、シャドウレンズを伸ばし先ほどと同じサイズのドラゴンコンタクトを仕上げてみる。
今回は白竜も期待に体が若干震えているように思う。もう一方は眩しさに耐えながらも動かぬよう必死に耐えてくれていた。
するりと希望がドラゴンの美しい眼球へ滑り込む。
『ああ、久方ぶりの素晴らしき穏やかな視界。カゲミツ、それにラナ! そなたらは我の恩人じゃ!』
「あのこれで街の近くで暴れることはないですよね?」
『もちろんである。ああ、なんとこの世界は美しいのだろう。そして我が姿も元通りになれそうだ』
上体を起こすと、白い鱗に蒼い文様が現れ始めその身をさらに荘厳に凛々しく彩っていく。
『ふう、我こそ白蒼の霊竜 シルヴァリオンなり』
「きれい! そしてかっこいいい!!」
『ははは娘よ、そなたの言まことに心地よい。そして黒髪の友カゲミツよ、二人には礼として我が秘宝を託そうと思う』
白蒼の霊竜と名乗ったシルヴァリオンは、見る見る姿を小さく変え人型へ同じ背丈ぐらいの美少女へと姿を変えていた。
「ふぅ人になってもお主のドラゴンコンタクトとやらは機能するようじゃありがたいことだな」
「うわあ人間になっちゃった!」
白いローブ姿の少女は、蒼いロングに緋色の瞳が似合う神秘的な容姿をしている。
ラナの容姿で麻痺しているが、人型シルヴァリオンの美貌はまた別格というかややきつめの目つきながらも、ははー!っと平伏したくなる気分になってしまう。
「何を呆けておるかカゲミツ。我はそなたのおかげで自由になれたようなものじゃ、何が良いか考えてみたがこれを渡そうと思う」
何もない空間から取り出したのは黒い謎の金属で作られた篭手? それに蒼いラインが数本入ったかなりイケてるデザインだ。
「お主の使う影形術を増幅しコントロールしやすくする効果があったように思う」
「そ、それはありがたい!」
「カゲミツ様さすがです! ドラゴンから武具を授かるなんて!」
「何を言っておる、お主にもくれてやるわ。何がいいかの……む? お主の盾、かなりくたびれているようだが」
ラナが左腕に装着しているバックラー型の盾はかなり痛み、見すぼらしく見える。取り換えないの? と声をかけようか何度も迷ったぐらいだ。
「なれば丁度良い品がある、ほれ」
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