第7話 陰キャ、レベル上げを思案する
尋問室の隅でタッパー飯を食べる俺の姿が異様だったのか、ラナはかわいい悲鳴をあげつつも仕方がない人ですねと連れ出された。
案内されたのは俺に用意された狭いが清潔な寝室だ。任務が残っているとすぐに戻っていったけど、もう呆れて近寄ったりしなそうだよな……なんて考え込んでいた。
あまり他人へ、しかもあんなかわいい子のことを考えると心が波立って気持ちが辛くなるから、もうこれぐらいにしよう。
関心なくなって関係が薄くなるほうが楽でいいから……
だが。様々な思いや念が去来し中々寝付けなかったことで新たな発見があった。
自身のスキルや魔法についての情報確認や調査、試し打ちなどで分かってきたこと。
職業 【 陰キャ 】 とは、かなり特殊な職業であるということだ。
衛兵などを鑑定スキルを使って調べてみると、職業 兵士 で武器レベルが存在しているが俺の場合は武器スキルを所有していない。
何か使えないものかと試行錯誤していると、不意にスキルポイント割り振りという項目ができたのだ。
※ レベルアップにより取得できる可能性をポイント化したものです。
獲得スキルは自身が経験したり認識した情報により、内包資質とすり合わせた上で判断されます。
判定中・・・・・
剣スキル 獲得不可 才能無しのため
槍スキル 獲得不可 才能無しのため
・・・・
ちょっとだけ期待したのに、すぐに打ち砕くなんて。
そりゃファンタジー世界きたらさ、剣で無双したりしたいじゃん。
まあ向いてないってわかってたからいいけどさ。
短剣スキル 獲得可能 陰湿なあたなにぴったりの武器
弓スキル 獲得可能 コソコソ攻撃するのが向いているため
投擲スキル 獲得可能 せこく陰湿な性格との親和性あり
……いちいち説明文がネガティブなのやめて欲しいな。まあ本人がそうだから仕方がないのかも。
影形術 獲得可能 影同化から派生した形状作成魔法の一種。魔法力を消費して物体を形作れる。
短剣はまあうれしいが、遠距離武器と、影形術ってのは気になるぞ。
試しにやってみると、影で球体や直方体をイメージ通りに作れた。もしかしたらと長い針を作ってみたらうまいこと造形することができる。
生き延びるためには、影形術をいかにして使いこなすかが重要になってくるとみた。
まだレベルは1にしかできないから、影密度や造形範囲がかなり絞られているな。
投擲スキルと影形術を取得した俺はいつの間にか眠りについていた。
「カゲミツさまああああ! おはよおおおおおおおおおおおお!」
強引に布団をはぎ取られるも、ラナは変わらぬ輝く笑顔で起こしてくれる。
なんでこの娘はいつも元気なんだ。死にたいって思ったことないのか? まあ呆れずに来てくれたのはちょっとだけ、うれしかったけど。
朝食はこの部屋で一人落ち着いてとりたいと言うと、じゃあ一緒に食べましょう!ってことになり
バスケットに焼き立てのパンとソーセージを持ってきてくれた。
なんだ意外と気が利くじゃないか……
……いい子だと思う。
その神秘的なまでに青く美しい瞳で見られると、どうにもドキドキが止まらない。
しょうがないよね、童貞をこじらせて女の子とは基本的に会話なんてないし。
「カゲミツ様って好きな食べ物何なんですか?」
ん? と上目遣いにふっとした笑みを浮かべてのぞきこむような仕草を見せられるのは辛い。
こういう子と一緒にいると心がぐらつく……
「特にないかな」
矢継ぎ早に質問攻めにされるのが辛いため、あえて、そうあえて質問をぶつけてみることにした。
「あの、俺みたいな弱い人でもいけそうなダンジョンとか、レベル上げのポイントない、かな……」
「レベル上げですか? ん~それって戦闘経験を積みたいってことですよね?」
「そ、そういうこと……です」
「なら初心者修練用のダンジョンがあるので今から行ってみますか? 神殿や騎士団からも今後の対応をきょうぎ? したいから自由時間って言われてるんです」
「行ってみたいけど、その、一人じゃ」
「何言ってるんですか? 私はずっとカゲミツ様のお側にいますからね」
ちょっと……心臓がドキドキしてしまう。
だってしょうがないだろ? こんな光輝くような二次元から抜け出してきたみたいな美少女に言われたら、おまえらだって絶対会話できないと思う!
な? 無理だろ? むしろ積極的に声かけるなんて思った陽キャはすぐに帰れ。ここはお前のいる場所じゃない……見下ろす場所ですね。
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という訳でラナに連れられて、王都リシュタール中央部に位置する初心者用ダンジョンへと到着した。
ここは少年少女が冒険修業をしにくるほど、最下級モンスターしかいない安全なダンジョンとして有名だ。
モグラ型のモゲランや、体がトゲトゲしているボール型モンスターのトゲマール、あの有名なゴブリンになりそこねたと言われるほど弱いレッサーゴブリンなどもいるらしい。
そういえばラナの実力ってどうなってるんだろう?
騎士団所属だからそれなりに戦えるのかな、まあどう考えても俺より強いことに間違いはない。
ラナから使えそうな武器に短剣とショートボウを受け取り、防具として騎士の訓練用ライトレザーを着させてもらう。男性用だと筋肉量が足りな過ぎてぶかぶかのため女性用を着るはめに。
「これ私が使ってたライトレザーだけど、ちゃんと洗浄魔法かけてるから大丈夫ですよ」
にこりと笑みを浮かべるが、ラナが使っていただけあって胸のあたりがやや緩い。
少しだけドキドキしてしまうし、いい匂いがする気がしたってやっぱり変態だな。
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