追放された冒険者を案内する『追放処理班』のギルド職員、裏で『ざまぁ代行屋』と呼ばれていた件。〜お望みのざまぁプランはこちらですか?〜
@TGIyuzu
case1 付与術師の復讐
第1話 付与術師、追放される。
「
そう言われて、キーラは呆然と立ち尽くした。
「今、なんて言った……?」
「俺達のパーティー、【
リーダーのケルビムは怒りを露わにする。キーラが反抗した事が心底気に食わないと言う様に、一切の口答えもさせぬ口調で言い切った。
「俺は付与術師としてお前達を支援して……」
「後ろでぐちゃぐちゃ魔法を唱えてて攻撃に参加しようともしねぇお前が、何調子に乗ってんだよ。後ろで魔法を唱えるフリして働いた気になりあがって、はっきり言って邪魔だ!」
「そんな……」
救いの手はないかと他のメンバーに顔を向ける。
聖女アリエス、武闘家ソイラ、盾使いシュゼット。
全員が白い目で見るばかりだ。
「早くこんなごみクズは捨てて、もっと上に行きましょう、ケルビム様っ。一生ついていきます!」
「いつまでいるつもりよ、キーラ。視界に映るだけで寒気が立つ、もうどっかに行ってくれないかしら」
「あ~あ、ようやくいなくなってせいせいするわ~」
味方はいなかった。
悔しさで泣き叫びそうになりながらも必死に耐える。
「そうだ、キーラ。装備も全部置いていけよ。俺達の資金で調達した物を奪っていかれちゃ困る。そこぐらいはお前の足りない頭でも分かるだろ?」
「(覚えてろよ……絶対に、絶対に!)」
キーラはその日、追放された。
□■□
ここは冒険者ギルド。
冒険者達が日々冒険を積み重ね、仲間とも友情を育む場だ。国民達や国、あるいはギルド自身が発動する《依頼》を受注する。
危険を対価に、かなりの金が稼げる、言わば博打系の職業だ。金に目がない荒くれ者達が多く集まる故にトラブルも絶えず、ここ最近は「追放」なんてのも増えて来た。
「ベリアルさん、おはようございます」
朝出勤すると、受付嬢達が挨拶してきた。
「ああ、おはよう」
「最近ベリアルさん、凄く真面目に働いていますよね。最近になって新設された『
「問題ない。冒険者の為を思えば、どうってことないさ」
力こぶを作ってみせる。
そうですか、と受付嬢は満足すると話が終わった。
『
これは、追放される冒険者が絶えない現状を鑑みて、ギルドが新たに新設した部署の一つである。
ギルド勤務3年。晴れて転属になった俺は、真っ先にこの部署へと入れられ、追放された冒険者の心のケアと再スタートを踏み出させる手伝いをしている。
そして今日も、俺達の部署に依頼がやってきた。
「ええと……依頼者はキーラさんで職業は付与術師。あちゃあ、またこのタイプか。これで何件目だよ、バッファーを追放するのは」
バッファーは所謂味方にバフを掛ける魔法師のこと。
活躍が目に見えにくくて、よく追放される。
「『追放処理班』さん~、依頼者が既にお見えになっています。それと、ベリアルさんのご指名の様なんですけど、如何しますかー?」
早速来ていたらしい。
人生のどん底に落ちたのか、暗い面持ちで佇む男。
「通しちゃって」
「はいはーい。ではキーラ様、こちらへどうぞ」
□■□
さて、本日の業務を開始しよう。
プライバシーの観点から、防音機能のある個室へと通して席に座らせる。特に暴れたりといった挙動を見せる様子はない。
「それでは、次に加入されるパーティーについては何か希望はありますか? 人当たりもよく、キーラさんの活躍を理解できるところへ───」
「興味ない。それより俺はお前個人に依頼をしに来た」
空気が変わった。
ギルド本人ではなく、個人の依頼。
それは、ある種の合言葉だった。
「
「【
「雑談はいい。してくれるのか。どうなんだ?」
それに対する答えは既に決まっている。
「
即断だ。
キーラはニヤリと嗤った。
「ですが、俺が行うのはあくまでざまぁ展開のセッティング代行であって、実行はキーラ様にやって頂きます。直接やった方がスカッとしますからね」
「そうか。なら、それで頼む」
本人もかなり乗り気だ。
「では、まずはプランの確認からいきましょう。ご要望されるざまぁ内容について、こちらの記入欄に書き込んでもらい、ご予算を提示させて頂きます」
「そうだな。まずは、リーダーのケルビム。こいつは最低でもランク降格、いや……それだけじゃ弱いな。ギルド追放まで陥れたい。それと、取り巻きのビッチ共。あいつらも俺の事を侮辱した。寝取って犯してやっても文句言われないんじゃないか?」
「ほうほう、いいですね~。アリエス、ソイラ、シュゼットの三人は奴隷コースなんて如何でしょう。名声を上げたキーラ様がその後買い占め、犬のように扱うのです」
「出来るのか!」
「何なりとお申し付けください。私はキーラ様の味方ですよ」
これがもう一つの俺の姿。
ざまぁ代行業務は立派な"心のケア"である。
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