第761話 ミュンハーフェンの攻防2

「みんな、聞いて欲しい」

 ジェロはリスチーヌたち昔からの幹部と、ディートマルたちを呼び集める。

「特にディートマルたちには厳しいことを言うけれど、最後まで聞いて欲しい」

「「……」」

「ミュンヒ王国の再興は、少なくともこの地では無理だと思う」

「な!」

「グンドルフ!」「ジェロマン様、すみません。続けてください」

「うん。認めたくない事実ではあると思う。けれど20年も経ってしまったことや帝国との位置関係も良くないよね。だから、この地域で苦労している元ミュンヒ王国の住民を避難させることに注力したいと思う」

「では、このミュンハーフェンの占領、ミュンヒ城の籠城はどうするのですか?」

「うん、それは続けるよ。ただ、今のまま籠城を続けて負ける直前になってから避難を開始すると帝国軍に追撃されて悲惨なことになるよね」

「では?」

「だから、籠城は続ける。でも避難は早々に開始して貰う。この仲間たちの力があれば、住民たちも一緒に籠城しているかは関係なく、しばらく持ち堪えることはできるよね。で、守るべき相手がみんな避難して居なくなったときに、空を飛んででも逃げてしまえば良いんだよ。長く持ち堪えるほど、ラーフェン王国への増援部隊も阻止できるしね」


「ディートマル様……」

「我らがミュンヒ王国が……」

 特に元ミュンヒの幹部たちは頭では理解できても気持ちでは納得できていない。しかし、ディートマルは以前から考えていたことでもあり、その先について言及する。

「ジェロマン様。では住民たちの避難先はいかがお考えでしょうか?ルグミーヌ王国が一番近いのでそちらを目指すのは分かりますが、その後は?帝国から逃して終わりでしょうか」

「まぁそんなつもりはないよ。希望するならば、開拓地テルヴァルデで受け入れることにする。でも、ルグミーヌ王国、ラーフェン王国、そしてコンヴィル王国でもどこでも希望するところに行って貰って良いからね。好き好んでこれから開拓する地に住みたいと思うかわからないし」

「おそらく実態を知れば、テルヴァルデを望むことでしょう。私は最後の王族として、国民が平和に暮らせるようになるまで頑張りたいと思います」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る