第748話 ディートマルの想い

 ジェロはミュンハーフェンの住民たちの厭戦感をディートマルたちに伝えに行く。街からは戦馬(バトルホース)で近くの森に移動し、そこで馬とネベルソンとアルマティを残して、リスチーヌとの2人で、≪飛翔≫にてルグミーヌ王国との国境に向かう。

 コンスタンに同行させた魔人サグリバス、その悪魔であるアグリモン経由の念話で場所は把握できている。


「みんな無事かな?」

「はい、戦馬が優秀なので少しぐらいの山道では問題ありません」

「それは良かった」

「その様子を見に来られたわけではないのですよね?」

 ディートマルはジェロの雰囲気から何かを察する。夕食が終わった後に、コンスタンとマドロール以外では、元ミュンヒ王国の幹部であるディートマル、グンドルフ、ヤーコプ、アウレーリウス、カスパーだけで集まる。


「つまり、元ミュンヒ王国の復興はもう無理だとおっしゃるのですか!」

「グンドルフ!」「ジェロマン様、申し訳ありません」

 感情的になるグンドルフを抑えてディートマルが謝る。

「言い方が悪かったかな。現地入りする前に、その可能性も心算(こころづもり)して欲しいんだ」

「確かに20年は、生まれたばかりの子供も成人し、さらに子供を成すこともできる期間ですよね……」

「二等国民として貧しい暮らしのようだけれど、帝国としても占領ではなく併合みたいだからね」

「どういうことでしょうか」

 家を買うことになった経緯を説明し、その際に入手したのが軍票ではなく貨幣だったことを例にあげる。帝国としては、搾取だけしていざとなったら切り捨てる程度のつもりの地域ではないと思われる事例である。

「つまり、命が脅かされるほどの酷い扱いではないので、現状に妥協する者も多いのではないかということですか……」

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