第718話 インラント防衛3

「結局のところ、挑発に乗って来たのは300騎くらいだったのですね」

「ま、東西南北で街を取り囲んでいるうち、東側の半数近くも来たのならば御の字だな」

 特に問題も発生せずに、落とし穴に落ちた帝国騎兵たちを順次捕虜にしていく。ジェロたちはまともな陣営を準備していないため、とらえた者のほとんどはそのまま建築中の砦に送り込む。


「奴隷契約まではできていなくても、簡単な情報だけは聞き出せましたね」

「ま、空腹だったところに、落とし穴での怪我も治療して美味しい食事を目の前に用意すれば、一般兵士なんて簡単に口を割りますよね」

 今回の3,000騎は、やはりムスターデ帝国内でもインラントに近い地方から急遽集められた兵士たちのようである。まずは騎兵の援軍を送りつつ歩兵や輜重隊を後から準備しているとのこと。

「同様のことは、モーネ王女たちが攻めているナウエリスの方でもありそうですね」

「困りましたね。ラーフェン王国南部の解放は、やはりムスターデ帝国からの増援への対処が肝ですね」

「とは言っても、もともと両国の国力の差は歴然……」

「帝国がラーフェン王国に兵を送れない状況にならないと。皇国が東方でちょっかいを出してくれるとか」

「うーん……」


「まずは目の前の騎兵、そしてその後ろから来ると思われる更なる大軍への対処をしないとインラントが再び帝国に占領されてしまいます」

「そうだね。残りの騎兵も引き続き落とし穴作戦かな」


 落とし穴から引き上げて捕虜にしたら、再び挑発をしてくることを繰り返す。流石に帝国軍も、誘い出されても戻って来る者がいなければ異常と気づくので、東部隊の次は南部隊、そして北部隊と挑発する場所を変えてみたが、そのうち効果もなくなる。

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