第584話 王都ミューコンへの出頭

「別に悪いことをしたのではないのですし、そんな面倒そうに……」

「でも分かりますよ、ジェロ様。せっかくガニーで自由や平和を満喫できているのに、王都へ王族や貴族の相手をするために行くのは、というお気持ちは」

「そうは言っても、もう伯爵様なんだぞ。更なる報奨を頂くためでもあるのだし」

「他国に逃げられたくないのだから、あまり無理は言ってこないはずですよ、きっと」

 家臣達がジェロの頭の中の葛藤を代弁してくれるが、確かにそろそろ腹を括らないと問題になりそうであるとは分かっている。気持ち的にはまるで自首しに出頭する気分である。


 そういえば、モージャンで領主令嬢のユゲット達と合流するという話もあった。それがなければ戦馬バトルホースのみで一気に王都に行ってしまう案もあるのだが、きっと馬車でゆっくり移動することになるのだろうな、と考えるとそれも憂鬱になる。

 仕方ないので、馬車の中で暇つぶしのためのポーション調合用の薬草、魔道具や魔法カード制作のための道具なども持参することにする。本来は馬車の中で揺れるとできないようなことばかりであるが、≪飛翔≫を併用して安定姿勢を確保するつもりである。



「またしばらく留守にするのね。気をつけて行って来てね。孤児向けの学校整備は進めておくわね」

「ジェロ兄、美味しいお土産、待っているね」

 隣人でもある神殿や孤児院のフロラリーたちに挨拶を行い、イドの奥さん達には何かと入り用になった時のための資金を預ける。冒険者ギルドのメオン達にも挨拶をして、ガニーの街を出発する。


 事前にエヴラウルとジョジョゼの2人を先発隊として、モージャンのユゲットたちに王都に向かう旨の連絡をさせている。コンスタンの従魔のワイバーンのルッツは、コンスタンの肩にとどまれるサイズではなくなったが、留守番も嫌がるので適当なときにはジェロの貴族用馬車の上にでも止まらせることにするつもりである。

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