第442話 偽案内人2

ワイバーンの卵を柔らかい布でくるんで、馬の背に乗せているコンスタンから先に後退させていた。≪飛翔≫したジェロとアルマティ以外は、流石に3倍もの人数差には驚くが、高低差のある位置取りをされているので、すぐに行えることは少ない。

エヴラウルの弓矢や、リスチーヌやレナルマンたちの魔法攻撃もあるが、谷間の下方から上方に対してはどうしても死角ばかりになり、あまり有効ではない。


≪飛翔≫しているジェロたちも魔法攻撃はできるが、敵からの弓矢攻撃が邪魔である。≪風盾≫や≪結界≫などの魔法でも対応しているが、人数差があり過ぎる。

「ジェロ様、殺してしまっても良いのでしょうか?」

「そうだよなぁ。共同戦線を頼みに来た国の騎士団だからなぁ」

『相手は殺しに来ているのに悠長ね』

ジェロが躊躇している間に、襲撃者の一部は逃亡を始めている。人数だけは優位でも、空を飛び強力な魔法を使う相手であり、弓矢も通じないのである。

「少なくとも帝国軍人は捕らえよう。あの偽案内人と、騎士団の一番偉そうな彼と」


アルマティには≪氷壁≫など派手な魔法で、狙いをつけた相手以外には戦意を失わせるよう指示をする。その指示でヴァルたちも意図を理解し、ターゲットだけ≪氷結≫などで束縛しつつ、他の者たちの命までは取らずに逃げるに任せる。

ターゲット3人を拘束し、いったん≪催眠≫で無抵抗にした上で武器などを回収し、縛りつけた状態にして皆の待つ場所まで運ぶ。

仲間以外にモーリートもいるため、≪催眠≫の短剣を取り出してそれを使用している素振りにしている。


「で、経緯を教えてくれるかな?」

一番口が軽そうな偽案内人だけを叩き起こして尋問を行う。束縛された上に10人もの相手に囲まれて味方が居ない状態である。素直に聞きたいことはわかった。

やはりベルカイム王国の騎士団は団長ノヴェールの意向もあり、ムスターデ帝国と密に繋がることを希望して、帝国士官を呼び寄せていたようである。その上で、宰相がユニオール皇国との繋がりを継続する目論みを邪魔するため今回の作戦に出たという。

ちなみに偽案内人の時には無口だったのは、成りすましに必要な情報全てを得ていたわけではなく、ぼろが出ないための最低限のやり取りにしていたからのようである。

偽案内人は、所詮は下っ端であり細かいところは知らないのであろうが、残る騎士団員と帝国士官が居ればさらなる情報も入手可能であろう。


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