第372話 ニースコン城門のシミ

ジェロ達がラーフェン王国に向けて街道を外れて行った後、ニースコンの城門で騒動が起きている。


「先触れは届いているはずである。責任者は早く出て来い。私はムスターデ帝国軍少尉のタバート・クメッチュ騎士爵である」

「まずはこの城門を預かる私が聞いておく。改めて伺う。帝国兵が何用であるか?またそこのシミのようになりたいのかな、はははは」

「くそ、バカにしやがって!おい、あいつを連れて来い!」

「もっと丁寧な扱いをしないか、私はコンヴィル王国貴族のルコント・ダンビエ子爵であるぞ!雑兵如きにそのような扱いをされる覚えはない!」

「うるさい!街道の陰で1人でコソコソしていたお前が本物か確かめてやる。魔剣まで持っていたが盗んだんだろう?たとえ王国といえどもそんな軟弱者が騎士団に居るわけがないだろうが」

「おいそこの城門の!私のことは分からないか?先日の使節団の先頭で騎乗していただろう?」

「そもそも知らんが、もし本物だとしてどうしたいんだ?少尉さんとやらよ」

「正直うっとうしい奴で、本物ならば身代金を貰うし、偽物のコソ泥ならばそれこそそこのシミにしてやろうかと」

「何!?おい、お前で分からないなら、近くに居るコンヴィル王国騎士団の誰かを連れて来い。私がダンビエ子爵であることを確認させろ!シミなんてふざけるな!」

「帝国軍の三文芝居ではないのだろうな?そうだったときにはシミを増やすからな。おい、王国騎士団に走って確認してこい」


城門の兵士が騎士団の派遣軍に到着し、誰かに確認を依頼したところ、ちょうど近くにいた司令官ヴァランタンの耳に入る。

「何?王国騎士団員にそんな軟弱者は居ないわ!帝国兵にまでバカにされるような奴はもし居ても不要だ!」

慌ててその返事を城門まで持ち帰る兵士を見ながら、副官ラプラードがつぶやく。

「やけに本物のゴマスリ子爵っぽくないですか?良いんですか?」

「これから本格的に帝国とは戦争開始するというときに弱みを見せられないからな。たとえ本物でも不要だし、偽物ならもっとどうでも良い」


元々は以前にジェロが火魔法で燃やした帝国兵のコゲシミだったが、首をはねられて飛び散った血のシミが地面に一つ増えたのであった。

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