第340話 ガニーへの蜻蛉返り

宿屋に戻るとイド達は既に休憩をしていた。先ほどと同じ言い訳で、ガニーに戻りたい旨を皆に伝える。

「わかりました。我々はガニーに家族も居ます。すぐに用意します」

「宿代を払ってきます」

「馬を出してきます」

「馬上で食べられる物を買ってきます」

一日ダンジョンに籠っていた疲れもあるはずなのに、ジェロの言葉に従ってテキパキと動いてくれる仲間達。皆には魔法の袋を渡してあるので、見た目には身軽な格好となり、騎乗してすぐにモージャンの街を出る。


夕方であり門の付近は混んでいたが、少し離れると暗くなるのと合わせて人通りも無くなる。光魔法の≪灯り≫≪照明≫を発動することで、自分たちの周りだけは明るくすることで闇魔法の≪夜目≫なども不要な状態で、馬を走らせる。

しばらく走ると、ジェロ、アルマティ、マドロールの騎乗能力が他者より劣っていることが顕著になってくる。いくら戦馬バトルホースが賢くて操作はほぼ要らないとはいえ、全力疾走させていくと差が出てくる。

不安が募るジェロは騎乗を諦めて≪飛翔≫に切り替えてみると、イド達の騎乗よりも速く飛べることが確認できた。そうなると、アルマティとマドロールに対しては、イドとレナルマンが同乗させて走る方が良いかも、となり、替え馬として伴走させていた2頭に二人乗りしてみる。

「良い感じですね。これでしばらく行ってみましょう」


気が急くジェロをイドとレナルマンが事故をして遅れると元も子もないと説得し、二人乗りの馬を順次入れ替えるためにも、小休憩を随時取りながらガニーに向かう。


かなりガニーに近づいたと思えて来た頃、先の方が漆黒の闇ではなくぼんやりと明るいところが見えてくる。

「もう朝か?」

「違う!火事だ!ガニーの街か!?」

「イド、皆で揃って後から追いかけて来てくれ!」

「ジェロマン様!お一人では危ないです!おやめください!」

止める声を振り切り、ジェロは1人で≪飛翔≫でガニーに向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る