第274話 ルグミーヌ王国との別れ3
案内された部屋では魔術師団長のヘルフィト・ムブルゴイが似たローブ姿の男たち数人と待っていた。
「テルガニ男爵、コンヴィル王国に帰られると聞いた。その前にお話をさせて頂きたく」
ジェロがますます身構えていると横に居たローブの男が代わりに切り出してくる。
「団長、そのような言い方では誤解を招きます。テルガニ男爵、申し訳ありません。実は先日拝見しました魔人とヴァンパイアの死体をお譲りいただけないでしょうか、というお願いなのです」
「え!?」
「おそらく氷魔法も随時使用されて魔法の収納袋でコンヴィル王国に持ち帰られて研究されるおつもりかと思うのですが、ぜひとも我々に譲って頂けないでしょうか。共にめったに入手できるものではないので、ルグミーヌ王国魔術師団として研究が大幅に進むのではないかと期待しておりまして」
「ヴァンパイアの魔石は無くても良いですか?」
「もちろんセットが良いのですが、それ以外をお譲りいただけるだけでも結構です」
「わかりました。良いですよ」
2体の死体をその場に取り出して差し出す。
「テルガニ男爵、よろしいのですか!こんな貴重な物をそんな簡単に。これまでの私の態度にお怒りでは無いのですか?」
団長が驚いて近づいてくるので、首を振って否定しておく。
「これにお応えできる物は……そうだ、王国魔術師団の秘蔵魔導書をご覧いただきましょう。もちろん金銭的なお礼もさせて頂きます」
「え!?秘蔵魔導書ですか!?」
「やはりお好きですか?どうぞどうぞ」
怪しい店の客引きについて行くようなやり取りでついて行くと立派な装丁の本を取り出してくる。
「どうぞご覧ください。もちろん必要なところをお手元に転記されても結構です」
では、と読み始めると現代魔術の風魔法の魔導書であり、人間が魔法で飛ぶことについて、であった。上級≪浮遊≫、王級≪飛翔≫であり、前者はふわふわと浮く感じであるが、後者は思いのままに飛び回れるものとある。ジェロが非常に興奮しながら夢中で研究ノートに転記している間に金銭的な代金はレナルマンが受け取っていた。
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