第134話 帝国の追手2

「これで、追手はこの痕跡を見つけると足を止めて調査し、森の中の死体も発見、さらなる調査をするために少し時間を稼げるでしょう」

レナルマンのアイデアに従い、ここからモージャンの街へは騎馬で進む。ただし、王女と王子は単独では騎乗できないので、それぞれ騎士と同乗する。馬車を引いていた2頭ずつの馬は、他に御者であったジェロとエヴラウルが騎乗すると、元々騎乗していた5人の冒険者と合わせて9頭の集団になる。

「少々の時間稼ぎができるとしても、我々より騎乗が上手な者達が追手のはずです。急ぎましょう」


とは言うものの、結局は王女や王子を同乗した騎士達は速度を出せないのと、あくまでも冒険者としてではなく職員としての最低限の訓練しかしていなかったジェロの騎乗能力ではそれほどの速度は出せない。馬車よりは確実に速くモージャンの街に近づいているはずであるが、追われて来ているという緊張感が余計に焦りをうむ。

「少し休憩をさせてあげて」

自らでは文句を言わずに我慢していた王子を慮って王女が休止を指示する。


『休憩になって俺も助かった』

『でもこのままでは不味いわね』

『あぁ、街の手前で戦闘なんてしたらモージャンの街にも潜伏している可能性のある敵に知られてしまう』

冒険者達の中でも頭脳派のレナルマンに相談すると、

「はい、ラーフェン王国の王都ほどではないでしょうが、王都を陥落させるほど送り込んでいたムスターデ帝国なら、モージャンの街にも、と思います。それに今から考えると王都に出たという魔人はモージャンのオークダンジョンの時の魔人とも繋がりますよね」

と同意を確認できる。

「ただ対策が、街から離れたところでジェロさんの魔法で追手を撃退して貰っている間に、こっそりモージャンの街に入って領主館に行くぐらいしか思いつきません」

「それは……」

『あら私はそれでも良いわよ。魂がたくさん入手できそうじゃない』

『無理無理』

「追手をあのオークダンジョンに誘い込みましょう」

ジェロはヴァルの希望は却下して、レナルマンに提案する。

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