第46話 偵察に行ったらグリコが飛んできた。
翌日、朝から『薬草摘み』のクエストを発行して貰うと一人で森に向かった。
姉さんがどうしてもゴブリン共を退治すると言う。
大人に任せようよ。
俺は何度も言ったが、言いだしたら聞かない。
俺は諦めて調査に行く事にした。
一人なら臭いを消す『
広場から使用して近づいて行った。
俺は風の魔法『
念の為に木々に隠れて移動する。
やはり知能の低いゴブリンが気付く様子もなかった。
俺は森の奥に進んだ。
昨日よりゴブリンと遭遇する数が多くなっている?
あくまで気分だが・・・・・・・・・・・・。
ゴブリンらが他の魔物を襲っており、
死んだゴブリンもゴブリンの食料になるのか。
ゴブリンの群れを追い掛けると、断層で出来た10mはある断崖が見えてきた。
その断崖が一部崩れて、ゴルフのドライバーのようなLの字状になっていた。
根元に大きな三角の洞窟があり、洞窟の周囲が1m程の土砂で高くなっているが、それを覆うように石の壁を組んで立てていた。
砦のつもりか?
見張りのゴブリンが壁の内外にうじゃうじゃといた。
まるでゴキブリのようだ。
ゴブリンの皮からゴブリン油が捕れるそうだが、日に照らされてゴブリンの肌はテカテカと緑光りしている。
俺はゴブリン油の唐揚げは食べたいと思わないけどね。
俺は森の中に隠れながら断崖に近づいた。
洞窟の周辺は開けていた。
これ以上は進めない。
目視できるだけでも100匹を超えるゴブリンがいる。
洞窟の中から巨大な影が出てくる。
オークのように大きな200cm近い巨漢なゴブリンだ。
上位種もいたのか。
これで納得だ。
ゴブリンリーダーのような進化種は周辺のゴブリンを操る。
集団行動が可能になり、攻撃力が飛躍する。
しかし、
種付けして3日が出産だ。
しかも5匹から10匹も産まれる。
苗床の
常に
昨日、違和感があったのはコレだ。
今朝、冒険ギルドの2階の資料室で確かめた。
賢者の知るゴブリンとこの世界のゴブリンの性質が違うのだろうかと考えたからだ。
ほぼ同じだった。
ゴブリンは
捕えて苗床にする。
だが、昨日のゴブリンリーダーは
明らかに可怪しい。
つまり、持ち帰る意味がないからだ。
上位種のハイゴブリンは進化種より強力なのは当然だが、厄介なのはそこではない。
奴はゴブリンを変質させて
自前で苗床が作れる。
10匹の
子供のゴブリンは3日で成長する。
苗床が10匹と限らず、100匹かもしれない。
そうなると餌がある限り増殖する。
そして、厄介な事にゴブリンは雑食だ。
肉でも草でも木の皮でも食う事ができ、森を食い潰すまでゴブリンは増殖を続ける。
最悪だな。
ぐおぉぉぉぉ!
オークのようにハイゴブリンがこちらを指差した。
見つかった?
どんなスキルを持っているか知らないが見えていないハズなのに看破された。
ヤバい。
100匹以上のゴブリンが押し寄せてきた。
俺は広場の方へ走ったように見せて、魔法の風でローブを飛ばした。
囮になるだろうか?
だが、森の中は視界が悪い。
ローブを追ってくれれば幸いだ。
俺は真っ直ぐに森の中を抜けたと思わせて、谷間に身を隠しながら東の川の方へ進んだ。
俺の気配を感じられるのはハイごブリンのみのようだ。
だが、俺の走る足音は消せなかったのか?
15匹の一団だけ追い掛けて来た。
「
他愛もない。
仲間を呼ばれては困るので一匹も逃がさない。
川だ。
俺は川岸に沿って南下して城壁町まで撤退した。
城門に到着すると大騒動だ。
「何かありました?」
「坊主は大丈夫だったか?」
「俺は川沿いを歩いていました」
「そうか。確かに川沿いには魔物が現れ難いと言われるな。運が良かったな」
「はぁ、何かありましたか?」
「ゴブリンの大軍が現れた」
「・・・・・・・・・・・・」
調査に赴いた冒険者パーティーらがゴブリンの群れに襲われたらしい。
調査に行って冒険者パーティーに100匹以上のゴブリンが襲い掛かった。
突然の襲撃にかなりの被害が出たらしい。
えっ、俺の所為じゃないよね。
「安心しろ。
「死んだのですか?」
「いいや、死者は出ていない。怪我人だけだ」
「そうですか。良かったです」
「ゴブリンリーダーも討伐された。後は残存のゴブリンを狩るだけだ。外に出る時は気を付けろよ」
「はい。気を付けます」
俺も偽装の為に適当に見つけた薬草を3房ほど腰に垂らしておいた。
何度も通過しているので「危ないからもう外に出るな」とは言われなくなっていたが、心配されていたようだ。
こうして無事に調査を終えた訳ではなかった。
問題はここからだ。
姉さんが金剛力士のような怖い顔をして仁王立ちで腕を組んで待ち受けていた。
「ア~ル。どこに行っていたの?」
「ちょっと散歩に」
「外は危ないって言ったでしょう。一人で行くなんて駄目よ」
「御免なさい」
「どこに行って来たの?」
「ゴブリンの調査です」
「馬鹿なの。そんな危ない事をして」
「ゴブリンを倒すと言い張ったのは姉さんです」
「それとそれよ」
「御免なさい」
「ア~ルの御免なさいは信用できないわ」
「グーは止めて!」
ほっぺたを限界まで引っ張るのが常の姉さんだが、姉さんの必殺技は『グリコ』だ。
馬鹿力の姉さんが万力のような両腕でこめかみを抑える。
痛い、痛い、痛い!
割れる、割れる、中身が飛び出す。
姉さんの『グリコ』は洒落にならない。
「グーは止めて! 御免なさい。もうしません」
「ホント?」
「ホントのホントです」
「ホント?」
「ホントのホントです」
「ホント?」
「もう、限界です。御免なさい」
ヤバかった。
頭の中でミッっという音が聞こえた。
肉体強化していなかったら、俺の頭はぽちゃっと肉片が飛び散って
絶対に割れている。
「ア~ル。今度やったら、学校にも裁縫にも連れて行くからね」
「俺が学校に行ったら怒られますよ」
「なら、学校の外で私が見える場所にずっと立っていればいいわ。それなら怒られないでしょう」
「ホント、許して下さい」
「ア~ルが危ない事をするからよ。私の目の届く所にいなさい」
「は~い」
姉さんの愛情はもうストーカーだ。
最近、夜中にトイレに行く時まで付いてくるんだ。
学校と裁縫以外はべったりだ。
「ア~ルがすぐに居なくないからじゃない」
姉さんの愛情が重かった。
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