第84話 セッ◯ス

 ベッドの上。

 俺はイライアを背中から抱きしめた。

 手を握ったり、頬にキスをしたりする。


「後、どれぐらいでこの子は生まれてくるのかの?」

 とイライアが呟いた。


「この子をお腹に入れて5ヶ月ぐらい?」

 と俺は尋ねた。


 尋ねなくても、ちゃんと生まれる日を俺は計算している。

 ミナミのお腹からイライアのお腹に移行した日を1日目とする。そんなザックリとした計算だけど。


「わからぬ。日付など400年ぐらい気にしておらぬ」

 と彼女が言う。


 オーバーサイズのウサギ耳の白いパーカーを着ていると体型がわからない。

 だけど確実にイライアのお腹は膨らんでいた。


「10月10日で生まれるから、後5ヶ月ぐらいじゃないかな」

 と俺は言った。


 超絶、ざっくりした計算だった。


「セッ◯スしても大丈夫なのか? お腹の子に障ったりせぬか?」

 と心配そうにイライアが尋ねた。


「5ヶ月ぐらいで安定期に入ると思うから大丈夫だと思う」

 と俺が言う。


 イライアとは今までイチャイチャ止まりだった。それは安定期に入っていなかったからである。

 

「お主はよく知っておるな」

 と彼女が言う。


「故郷に子どもがいたんだ」

 と俺は言った。


「何人いたんじゃ?」

 とイライアが尋ねて来る。


「1人だよ」と俺は答えた。


「会いたいか?」


「いつでも会いたい」


「そうか」と彼女は言った。

「お主は妾が安定期に入ったからセッ○スしに来たのか?」


「そうだよ」

 と俺は言った。

 本当は関係ない。セッ○スが無くても頻繁に会いに来ている。


「いやらしい男じゃの」

 と彼女が言う。


「イライアを抱くのを、ずっと待っていたんだ」

 と俺は言った。


「そうか」と彼女が言った。


「気分は悪くない? 体はしんどくない?」

 と俺は尋ねた。

 

 これから運動をするのだ。

 少しでもしんどいなら止めるつもりだった。


「大丈夫じゃ。安定期というやつじゃ」

 と彼女が笑う。


 それから俺達は見つめ合って、お互いの頬をスリスリした。

 そして俺は彼女にキスをした。

 柔らかい部分同士が絡み合う大人のキスである。

 少しだけ魔力を吸われた。


 唇から口を離す。

 そして小麦色の彼女の首を舐めた。


「くすぐったいの」と彼女が小さく呟き、足に力を入れた。


 首から耳に移行する。


 美術館に展示されていてもおかしくないぐらいに綺麗な耳だった。


 耳の縁をなぞるように舐めた。

 彼女の手が、俺の手を強く握った。

 やっぱりダークエルフも耳が性感帯みたいである。


 耳の小さな穴の中に、舌を入れた。

 イライアが足をバタバタさせた。

 

「クスグッたい?」

 と俺は尋ねた。


 ポクリと彼女が頷く。

 小麦色の肌が真っ赤だった。


「反対の耳」

 と俺が言う。


 彼女は銀色の髪を耳にかけ、反対側の耳を俺に差し出した。


「こっちも舐めてほしい?」

 と俺が尋ねた。


「聞くでない」と彼女が言う。「差し出しているってことはそういうことじゃろう」

 照れ臭そうに言うイライアがすごく可愛い。


「舐めるのやめようかな?」


 待てと言われた犬のように、彼女が俺のことを見る。


「……じゃ」とイライアが言った。


「なに?」と俺が尋ねた。

 彼女の声が小さくて聞こえなかった。


「舐めるのじゃ」

 と彼女が照れ臭そうに言った。


 照れているのがすげぇー可愛い。


「どこを?」

 と俺は尋ねる。


「耳じゃ」

 とイライアが言う。


「いや」

 と俺が言う。


 プクッと彼女が頬を膨らませた。

 人差し指で彼女の頬を触ると口から空気が漏れた。プシュー。


「嘘嘘」

 と俺が言った。


 俺はイライアの耳を舐めた。


 彼女は足をバタバタさせている。


 耳を舐めながら彼女の色んなところを触った。

 太もも、胸、そして口に指を入れてみた。

 飴のように彼女が俺の指を舐めた。


 濡れた指で彼女の大切なところを触った。


「少しでも痛かったら教えてね」と俺が言う。


 ポクリ、とイライアが頷いた。


 そして俺達はキスをした。

 彼女の柔らかい部分が、俺の口の中に侵略して来るようなキスだった。

 イライアが興奮しているのが、口の中の動きで伝わった。


 彼女をベッドの上に寝かせて、お腹の子に障らないように優しくイライアを抱いた。


「愛してる」と俺は彼女の耳元で囁いた。

「もうイライアのことを1人にさせない」

 まるで誰かに言わされているように自然に言葉が出た。


 彼女は俺に大切だった人を投影しているのか、息を飲んで俺を見つめた。


「あぁ」とイライアは小さい喘ぎ声と共に、涙を流した。


 かつて魔王と呼ばれていた女性が、今は俺の胸の中にいる。

 ずっと暗闇の中を1人で歩いて来たのだ。


 愛してるよ、と俺は何度もグショグショになったイライアの耳に囁いた。

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