外も中も…
暫くして、千秋が戻ってきた!
「葵、中身もちゃんと葵でいてよ!」
「何よ、それ」
「そうじゃなきゃ、嫌だって意味だよ」
「わかってるけど、大丈夫だよ」
「本当に?」
「本当だよ!もしかして、千秋も同じ夢を見てたのかな?」
「わからないけど…。俺は、外も中も服部葵じゃなきゃ嫌だ」
「何で、旧姓言うのよ」
「だって、別人なら旧姓しらないだろ?絶対」
「それも、そうね」
そう言って笑った後で、千秋は手を握りしめてきた。
「葵のお母さんが退院したら、顔を見せて欲しいんだって」
「わかった」
「じゃあ、早く元気にならなくちゃね」
「うん、わかってる」
千秋は、ずっと嬉しそうにしている。私もそんな千秋を見ているのが嬉しい。
千秋を捨ててしまった夢を見た!赤ちゃんに囚われて入れ替わった夢を見た。
凄く、嫌な夢だった。千秋との生活しかいらない。そう強く思ったから、目覚めたんだよね。
「明日は、一般病棟にうつるんだよね?」
「うん」
「じゃあ、明後日にはカフェぐらい行けるかな?」
「わからない」
「聞いてみて、大丈夫だったら行かない?車椅子押すから」
「うん、行きたい」
千秋は、私の手を握りしめると自分の頬に持っていって頬擦りをしている。
「何?」
「葵が、生きてるのが嬉しい」
「ありがとう」
「ずっと一緒にいようね!葵」
「わかってる」
「本当に嬉しい、幸せだよ」
「千秋、何か変だよ」
「だって、3ヶ月も眠っていたんだよ!葵は、3ヶ月も…」
「そうみたいだね」
「だから、寂しかったんだよ」
「一人の家?」
「そうだよ!一人の家に帰るのは寂しかったんだよ。ずっと…」
「千秋、ごめんね。もう、悲しませたりしないから」
「うん、わかってるよ」
「仕事は、どうしてるの?」
「有給休暇、使ってる」
「ごめんね、私のせいで」
「ううん、葵の目が覚めただけで充分だよ」
私は、泣きながら千秋に抱きついていた。
「愛してるよ、葵」
「私もよ、千秋」
「じゃあ、また明日来るからね」
「うん、わかった」
「明日、お昼までには来るからね」
「うん、気を付けてね」
「じゃあね、バイバイ」
「バイバイ、千秋」
私は、千秋が帰って行くのを見つめていた。3ヶ月も眠っていたなんて…。
千秋は、寂しかった筈だよね。
「晩御飯、食べれますか?」
「はい」
私は、看護士さんにご飯を渡された。ゆっくりと口にする。液体のようだから、飲み物みたいだ!ゆっくりゆっくり胃袋に流し込む。早く退院しなくちゃ、だから頑張る!
美味しくはないけれど、退院を早くしたいから頑張ってご飯を口にしていた。
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