私が欲しかったものは…。
千秋は、毛玉だらけの私の服を脱がした。
「葵の服を持って帰りなよ!サイズは同じような気がするよ」
「うん」
ブラジャーをパチンと外す。
「知らない体だ」
「大丈夫、私だから…」
「うん」
千秋は、優しく丁寧にしてくれたのだ。全てが終わって私達は、隣同士に寝転がった。
「母乳って変な味だな」
「飲めてよかった?」
「いや!いらないかな」
千秋は、そう言って笑った。
「ねぇー、千秋」
「何?」
「あの日話したよね?」
「うん」
「磯辺葵が目覚めるまででいいから、私とそうして」
「生理はあるの?」
「母乳あげてるのに、きてるのよ」
「そんなガリガリなのに栄養は足りてるって事?」
「違うわ!来たのは、入院してからよ」
「あー、そういう事ね」
「これからは、私の貯金があるから」
「わかった!俺も援助するよ」
「いいわよ、わざわざ」
「させてくれよ!二人で頑張って15年間貯金しただろ?そのお金を使うから」
私は、千秋の手を握りしめる。
「それは、駄目よ!300万なくならないうちに仕事探すから…」
「あの、旦那さんは大丈夫?」
「多分ね」
「葵」
千秋は、私をギュッーって抱き締めてくれる。
「あのね、この私はね!あの旦那と一緒にね…」
「そんな!酷いよ」
抱えきれなくて、千秋に話していた。千秋は、私の手を握りしめる。
「警察に行こう」
「出来ないわ」
「じゃあ、どうしたら…」
「気にしないでいいのよ!その為にお金を取りにきたのだから」
「葵、ごめんな!何も出来なくて」
「別にいいのよ!千秋」
千秋は、もう一度キスをしてくれた。
「葵とまた暮らしたい」
「ごめんね!私、ワガママだった。こうなって初めて、大事なのは赤ちゃんじゃない事を知ったの。ここにいた時は知らなかった。元に戻れると信じてたのに…」
「戻れないなんてな」
「そうね!でも、仕方ないわよね。私が望んだんだもの」
「葵、またこうしたい」
「私もよ!千秋」
千秋は、私の腰を自分に引き寄せる。優しいキスを繰り返してきた。
「連絡先、教えて!また、会おう」
「うん」
暫くの間、私と千秋はくっついていた。起き上がって一階に行く。
「服、持って帰りなよ」
「うん」
私は、千秋に言われてお気に入りのワンピースを二着だけ千秋がくれた紙袋にいれる。ビニール袋をもらって、お気に入りのヒールだけを入れた。
「ありがとう、連れてきてくれて」
そう言って私は千秋に抱きついた。癖で、腰のズボンの線をなぞる。
「やっぱり、葵だ」
そう言って、千秋は私を抱き締めてくれた。
「ありがとう、千秋。信じてくれて」
私も千秋をギュッーと抱き締める。この場所にいたい。ずっと、ここにいたい。でも、帰らなくちゃ…
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