彼女の話1ー2
晩御飯
オムライスにしよう!冷蔵庫を見つめながら、そう決めていた。雪那が、よくオムライスを褒めてくれたからだ。でも、不思議とあの生活に戻りたくはない。
玉ねぎとにんじんとベーコンを取り出した。炊飯器には、今朝のお米が残っている。
雪那と恭介は、可愛かった。けれど、それは少しだけ…。恭介の夜泣きに振り回され、雪那に私と同じ事をさせ始めてから私は二人が嫌いになったのだ。
雪那が仕事を始めた頃、スマホのカメラで見るとおじさんに丁寧にやり方を教わりながらそうしていた。何回かすると、おじさんがそれを見せると当たり前のようにそうするのだ。昔の私もそうだった。それが、とてつもなく気持ち悪かった。褒められなれてないから、褒められたくて一生懸命やるのだ!雪那も私も同じだった。そして、吐く事は許されなくてそれを胃袋に流し込むのだ。気持ち悪さは、最初だけだ!何回かすれば、慣れたものだった。それを受け入れてるあの子の目に私は度々嫌悪の眼差しを向けた。気持ち悪くて、あの子をどんどん嫌いになっていくのを感じた。いつか、殺してしまうのを感じた。だから、あの日二人をおいて死のうとしたのだ。愛せなくなっていくのを感じていた。それは、急速なスピードで進んでいったのを感じていた。
私は、綺麗なフライパンに玉ねぎとにんじんとベーコンをいれる。お米を入れたら、塩コショウする。電動な事に感激した。冷蔵庫から、ケチャップを取り出した。オーガニックと書かれている。こんなのを私は、食べた事がない。中身を炒め終わった。
暫くして、玄関が開く音がする。もう、そんな時間なのか!
「ただいま」
「おかえり、千秋」
「葵、ご機嫌だね」
「うん」
「アップルパイ食べた?」
「食べた」
「美味しかった?」
「うん、凄く」
「服着替えてくるね」
「うん」
千秋は、服を着替えに行った。
私は、冷蔵庫から卵を4つ取り出した。今までなら、勿体ないから一つしか使わなかったけれど…。磯部家は、違う!二つ使えるのだ!茶色の卵を小さなガラスのボールに割る。
オムライスを包んでみたかった私は、それをやってみる。うまくいかないながらにも、何とか出来た。
私は、お皿にそれをうつす。二種類ずつ形が揃った食器が並んでいる。
「オムライス?」
「うん」
「美味しそう!スープ作る?」
「何がいい?」
「これ使ったら?」
高そうなコーンスープの缶詰を差し出された。
「わかった!」
「うん」
夫である千秋は、ニコニコと笑いながらダイニングテーブルにオムライスを持って行ってくれた。
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