何で、こんな不幸なの
とにかく千秋の居場所を突き止めなきゃ!
「お腹すいた」
「何か作るね」
私は、そう言ってキッチンに向かった。冷蔵庫をあける、干からびたにんじんが転がっているだけだ!
「何もないじゃない」
「あー、腹減ったな!ほら、二万な!パチンコ行ってくるから」
そう言って、旦那は出て行った。何て言う旦那なのだ!
「ママ、お腹すいた」
「うん、服着替えたら買いに行こうね」
「うん」
私は、服を着替える。萎びた服ばかりだ。毛玉だらけ、色味もさえない。左指にはくすんだ指輪。化粧品もない。それでも、仕方ないからそれに着替えた。
「行こうね」
「うん」
破れた財布にお金をいれる。エコバックがどうやら彼女の鞄だ。恭介君を抱っこした。
「ベビーカーで行かないと」
雪那ちゃんに言われた。玄関を出る。便所ではくようなスリッパを親子ではいている。鍵を閉めて、立て掛けてあるベビーカーをとる。ゆっくりと広げて恭介君をベビーカーに乗せる。
「行こうか」
雪那ちゃんにベビーカーの端を持たせる。ベビーカーを押すとガッタンガッタンと揺れる。何、この建て付けの悪いベビーカーは…。ゴミのようなベビーカーではないか…。でも、慣れてるのか恭介君は起きなかった。
子供が身体を売ったお金で買い物に行ってると世の中の、人間はどれだけ知っているのだろうか?
私は、知らなかった。子供がいるのは、幸せだと思っていたから…。千秋に会いたい。
ガッタンガッタンとベビーカーを揺らしながらスーパーにやってきた。
「何、食べる?」
「雪那ね、ママのオムライスが食べたい!後ね、唐揚げとね」
「うん」
五キロのお米とタマゴと鶏肉と玉ねぎとにんじんと牛乳と小麦粉を買った。それだけで、五千円は軽く越える。高い、高すぎる。こんな事を考えながら買い物なんかしなかった。千秋の給料から、必要な分を抜いて貯金を三万から五万する!そして、食費は好きな物を食べていた。私は、今になって自分がどれだけ恵まれた環境にいたかに気づかされた。
ベビーカーの下のかごにお米を乗せる。布がいずれ破けそうだ。持ち手に袋を下げて歩き出す。
「ママ、お菓子買いたい」
「いいよ!待ってる」
私は、雪那に500円を渡してあげた。
「じゃあ、待っててね」
そう言って、走って行く。まだ、小さい彼女を幸せにする権利が母親ならあるはずだ。私は、ボロボロの財布を見つめる。キャッシュカードが入っている。
タナベアオイと書かれていた。私は、どうやらタナベアオイの人生を経験しているらしい。
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