第10話 両国友好の儀(1)
「演習の次は両国友好の儀を開くと?」
「そうだ、向こう様がどうやらうちと仲良くしたいと思っているらしく」
サンクチュアリではなく王の謁見の間で王と王子として話をしていることから、かなり重大な内容であるとリオは悟ってノエルの話を聞く。
「その両国友好の儀というのは具体的には何をするのですか?」
「基本的にお互いの国の伝統行事を披露しあうのと、あとは自由にやってほしいと」
「自由にやってほしい?」
そこまで言うとノエルは、こめかみに親指を当ててあとの指を額に当てながら、苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「今回はトラウド国王のご希望により、こちらへの来国も兼ねてルーディアム国での開催が決定した」
「なるほど、前回の演習はトラウド国での開催でしたから、今度はうちでというのも納得がいきます。それでは外相担当として私のほうでおもてなし準備をいたしましょうか?」
「そうだな、リオのほうでセレモニーを含めたプログラムなどの準備を頼めるだろうか」
「かしこまりました。すぐに整えます」
「ではよろしく」
そう言ってノエルは謁見の間での王の椅子から立ち上がり、そのまま間から去った。
一人になったリオは、一つため息を吐くとそっと天井を見上げる。
(必ず成功させなければ……。ルーディアム国での開催で失敗はできない)
リオは心の内で決意をし、そっと立ち上がるとそのまま大きな謁見の間の扉を開いて出て行った。
その後リオは公務に専念するためフィルのもとへは行かずに自国で友好の儀のプログラム指揮を執っていた。
セレモニーではルーディアム国の伝統衣装を着て行うダンスや伝統楽器の演奏などを中心におこなうことにした。
すぐに人数は集まり、会場ではリハーサルが行われている。
「あ、リオ王子」
「どうだ、調子は?」
「はい、問題なくおこなっておりまして明日の本番には間に合います」
「そうか、よかった」
リオはそっと胸をなでおろすと、そのまま会場を見回す。
(明日にはこの会場に多くの民衆が入って盛り上がるだろう。楽しみだ)
そう思ったあとリオの頭の中にふとフィルの顔が思い浮かんだ。
(彼は来てくれるだろうか)
禁断の恋の相手であるフィルを思い浮かべて、リオは照れるでもなくふと哀愁漂わせた悲し気な表情を見せた。
どうして私は王子なのだろうか、は心の中で自分の運命を恨む。
こうして、リオの取り仕切りにより準備が進み、いよいよ友好の儀の当日を迎えることになった。
◇◆◇
「ルーディアム国王に急ぎ届けたいものがあるのですが」
「王ならもう友好の儀の会場に向かわれましたが」
「なんですと?! しまった……遅すぎたか」
トラウド国の使者はがっくりとうなだれるが、すぐさま立ち直りルーディアム国王ノエルを探して会場へと向かった。
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