第7話 料亭へGO

300m四方と言われる、駐車場に行くかと思いきや

正面玄関横の8台分ほど駐車場に置くように案内される

スラローム競技のスタート位置への誘導マーシャル気分の

山崎さんの意を組んで、皆頭から突っ込んで止めていく


3台目の加藤車まではたどたどしい

4台目のおっさんの25になってやっと少しスムーズになった  


「いやぁ、こう言う車を4台も順に並べると、ワクワクしますね

 明日もやっていいですかね」 ノリノリの山崎さん


そう言われれば、栗原も加藤も峠仕様でマフラー換えてるし

佐々木のは、18RGのLBでノーマルでもソレックスで煩い


おっさん達は、駐車場の名札が社長とか専務とかになっていた事を確認してるが

せっかくノリノリで誘導したんだしと見なかった事にしよう と密談


食事処のマイクロバスが来ると信じて待っている5人

山崎さんは、受付に行き何処へやら、電話を繰り返してる


15分は待たされて

最初に来たのが、黒クラウンのハイヤー だれも動かない

山崎さんがハイヤーに近づきなにか話してる

そして、また会社の中に入り、何処へやら電話を掛けている


更にしばらく待つ


「なかなかマイクロ来ねえなぁ」

「休日前だし、混んでるんだろ」

と他愛もない会話が続く


待っていると、もう一台黒いクラウンのハイヤーが到着

「神田、なんか偉い人が残ってるのか」と加藤が訊く


「んなもん、ど新人の俺が解るかよ」と返す神田


「みなさん、分乗して乗って下さい

 私と神田くんは別の車両にしてくださいね」

と山崎さんが軽く言う


なんなんだ、この人


一台目に神田と加藤と栗原

二台目に山崎さんが率先して助手席に座り

後部座席におっさんと佐々木

ハイヤーなんて初めての5人と慣れきっている山崎さん

車が動き始めて、何処へ向かうかも知らないが


「この服で大丈夫な処ですよね 着替えは無いですよ」おっさん

そう、ハイヤーで連れてかれてドレスコードとかあったら堪らん


山「大丈夫です、しかしおっさんは、きっぱりしてますね

 先程の名刺の件、しびれました」


お「今のターマックの峠でもそうですが、グラベロの林道だと

 簡単に落ちて命に関わりますから、私も落としかけましたし

 友人は逝きましたから シビアにもなります」


山「え、お亡くなりに」


お「そうです、15m落ちてね 葬式なんて悲惨でしたよ」


佐「それって4年の時のやつやろ、おっさんの関係者やったん」


お「そうだよ、仲の良かったやつだ そこそこの腕だったけど

  林道行くのに4人も乗って下りでアンダー出して

  二人分重いからな、断ればよかったんだよ」


佐「おっさんの言う時は言うのは、そう言う経緯か」


お「ああ、自分もだが、線引きしとかないとな」


黙って聞いてる山崎さん

「なんか、軽く考えてましたが、そこまでの考えで」と山崎さん


「いや名刺の件は、一回言ってみたかっただけです」話題を変えに行くおっさん

「まぁ済んだことですし、俺は今も生きて遊んでる

 その遊びに加わりたいと という事ですよね 山崎さん」


しばしの沈黙


どうやら、思ったよりハードな所に首を突っ込んでしまった

「神田くんとかも、そう言う経験をしたんですか」と話を戻す山崎さん


「神田はないだろ、あいつ俺らに交じるまで真面目一本だったから」と佐々木


「その話はさっきで終わり、今夜の夕食はなんですか」

強引に話題を変えに行くおっさん


これ以上は、なにかあると感じたようで、夕食のメニューを紹介しだす

「鍋と言ってましたが、やっぱりこの時期に鍋を出してくれる店がなくて

 それと、名刺の一件で私も肚を据えないと で店を変えようとしたんですが

 今これからだと流石に無理でして


 爺さんに泣きついて、爺さん予約を奪って贔屓の店に行きます 懐石です

 後で、爺さんに報告しないといけなくなりましたが

 名刺の一件、おっさんと達とご飯をともにして酒を呑んだ

 これで、爺さん持ちで呑み食いできます」


「俺なんて、そんな大層なもんじゃないですよ

 そう言うトコだと栗原なんて部品見極めてくれるから

 中古の部品でも安心して踏めるし

 この佐々木だってマージン残しつつ攻めたセットしてくれるし

 加藤だって、足の具合で絶対ムリしないセットだすし

 神田だって、あいつが連絡してくれるから集まれる」おっさん


山「ほう、うちの神田も大事ですか」


お「その言い方はNGですね、今は友人の神田ですよ」


山「あ、そうですね、そのとおりです

  店に着くまでの会話だけで、爺さんへの土産話出来すぎです

  この先の話だとか、ワクワクします」


えらい立派な料亭の車寄せに降り立つ5人

山崎さんは店の中に入りまた電話をしている


お「なんか、えらい感動してるけど、大丈夫かな」


佐「おう、おっさんのツッコミに毎回感動してたし」


神「何話したんだよ、俺の会社人生は大丈夫かよ」


佐「大丈夫、会長の予約をぶんどって今からここで俺達が飯を食う」


神「それの、どこが大丈夫なんだよ」


栗「専務だか常務だかの、車を口先だけで、ロハで貰うおっさんだよ」


お「口先だけとはひどいなぁ、仕事の実績で貰ったと言ってくれ」


加「まぁ事実だし、金払ってないんだろ」


お「そこを憑かれると、何も言えん」


誰ともなく「なんか、俺達だけ完全に場違いだよな」

一同で「それはそうだよね」と納得してると

中居さんが店の中へ案内してくれる


結構な和室で、掛け軸もちゃんとしてるし花も活けてある


テーブルの右角隅に座る山崎さん

そこ下っ端の席


中居さんに促されて、上座の真ん中に座る栗原 左には佐々木

下座の左隅に神田 真ん中に加藤


おいおい、俺が上座の上 床柱の前なんかよ

中居さんに指示を出したのは山崎さんみたいだ


「おまたせしました、爺さんにおねだりでしてたら

 途中報告しろって言われて、車の中の件を話したら

 いやぁ、爺さんも来るってゴネ出して、流石にいきなりは、

 で時間を食ってしまいまして」


は?何言ってるのこの人 状態の5人

特に神田なんかは、意識がどっか行ってる


「でも、おねだりした甲斐があって、YK45をお出し出来ます」

更に混乱する5人 おねだりでYK45だと

慣れた手付きで、パンパンと手を打ち中居さんを呼び

食事の開始を宣言する山崎さん


さて、今宵は此の辺で

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