第8話 VSゴブリンコマンダー

 森の中を走り続ける事15分。


 マップの端に、やっとゴブリンコマンダーの反応が現れた。


 周辺には、恐ろしい数のモンスター反応がある。


 ホブゴブリンが群れと合流すると、群れ全体が一斉に動き出した。


 俺を討伐するためだとしたら、ちょっとモテ過ぎだろう。


 でも、悪くない判断だ。


 連中からすれば、住処の森に突然謎の人間が台頭してきたことになる。


 戦力の逐次投入をせず、全兵力を以って確実に討つ。


 ゴブリンコマンダーは、よほど好戦的で、しかも用意周到な性格と見た。


 群れの進行方向から、俺は連中が通るであろう道に辺りを付けると、そこから少し離れた木に登った。


 レベル25の身体能力なら簡単だった。


 小学生時代のかくれんぼを思い出して息をひそめながら待っていると、遠くから森を踏み荒らす数百の足音が近づいてきた。


 やがてゴブリン、ホブゴブリンを含め、四足歩行のモンスターも混ざった混成部隊が姿をあらわした。


 異形の軍勢に、俺はちょっと驚く。


 ――クエスト書類だと推定規模50~80ってあったのに、見積もりが甘いな。


 いわゆる、希望的観測が過ぎる。


 ――まぁ80でも多いけど。思ったよりもCランクって凄いのかな?


 ゴブリンとホブゴブリンなら、倒すのに問題は無い。


 重要なのは、ゴブリンコマンダーのレベルだ。


 雑魚との戦闘に体力を奪われてから想像以上に強いゴブリンコマンダーとの一騎打ち、なんて最悪のシナリオは避けたい。


「…………」


 俺はちょっと卑怯だとは思いつつ、木の上からゴブリンコマンダーを探した。


 マップの反応を見る限り、ゴブリンコマンダーはホブゴブリンたちに囲まれているらしい。それに、別のモンスターの反応と重なっている。


 その情報を元にすれば、どれが誰かはすぐに分かった。


 子供のように小さなゴブリンとは違い、青年ぐらいの身長があるホブゴブリンたちの中央。


 青くて巨大なハイエナの上にまたがった、ひと際背が高く鳥の羽飾りを冠のように被ったゴブリンがふんぞり返っていた。


 あれがゴブリンコマンダーで間違いないだろう。


 あと五秒で、俺の視線の先を通り過ぎる。


 俺はアイテムボックスの中で、あらゆる毒草から猛毒を錬成。


 18種類の猛毒を混ぜ合わせてカオスと化したソレを、矢の先端に取り出した。


 本当は直接口の中に取り出してやりたかったけど、生き物の体内や体表面は取り出し場所に指定できないらしい。


 なので、毒矢だ。


 ――喰らえ。


 手を離すと、毒矢は狙い通りゴブリンコマンダーの首を直撃した。


 間髪を容れず、連中の頭上に大岩を大量に取り出してやった。


 大岩の雨の中、リーダーの指示も仰げずにゴブリンたちは骨折級の重傷を負いながら悲鳴をあげる。


 戦いの邪魔にならないよう、岩を収納してから、俺は次々ホブゴブリンに矢でトドメを刺してやった。


 20発以上矢を射てから、木の上から降りた俺は疾走。


 軍勢の中に躍り出ると、難を逃れたホブゴブリンと獣が襲い掛かってきたが、十文字槍で返り討ちにしてやった。


【ホブゴブリン レベル18】

【マーダーハイエナ レベル19】


 ホブゴブリン達はなかなかの忠誠心で、毒に苦しむゴブリンコマンダーの元へ向かおうとする俺に果敢に立ち向かって来る。


 けれど、時間稼ぎにもならなかった。


 毒矢を引き抜いたゴブリンコマンダーは息を荒らげながら俺を睨みつけると、腰からロングソードを引き抜いた。


 ゴブリンに鍛冶技術があるとは思えない。


 汚れているし、きっと殺した冒険者か騎士から盗んだものだろう。


「■■■■■■■■■■■■■■■■!」


 ケダモノのような唸り声をあげながら、ゴブリンコマンダーはロングソードを振り上げ襲い掛かってきた。


 流石に動きが速い。

 レベルはかなり高そうだ。

 けれど、こっちの得物は槍。

 射程は俺が有利だ。


 俺は槍の射程をキープしながら、ゴブリンコマンダーに渾身の連続突きを叩き込んでやった。


 向こうは毒の回った体で食らいつくようにして連続突きを防ぐも、疲れが見える。


「ちょっと卑怯でごめんな。けど、そっちは200体、こっちは1人。なら、毒ぐらい許してくれよな!」


 足に来たのか、ゴブリンコマンダーがたたらを踏んだ一瞬を見逃さず、俺は渾身の突きを繰り出した。


 息を止めて大地を踏みしめ、下半身の筋力を腰、背中、肩へと伝えながら全運動エネルギーと体重をやりに込めて、急所に叩き込んだ。


「■■■■ッッッ!」


 十文字槍の穂先がゴブリンコマンダーの首を直撃すると、左右の鎌の刃がそのまま頸部を切断。


 ゴブリンコマンダーの頭は地面に落ちると同時にアイテムボックス送りになった。


 残るのは、岩でケガをしたゴブリンたちだけだ。

 これ以上は苦しまないよう、刀で介錯してやる。

 戦いが終わった時、俺のレベルは28になっていた。


【ゴブリンコマンダー レベル28】



・人気になったら本格連載!

・この第8話に128PVついたら9話目投稿!

※PV プレビュー 本文の視聴回数のこと 今みなさんが目にしているのは8話。

2話 3話 などそれぞれの作品にアクセスするごとに各話のPVが1増えます。

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