第112話 兄の憶測
「ブラッドリーが中庭に……?」
一体どういうことだろう?
「もし、ブラッドリーだとしたら何故中庭にいたのにお前たちに声を掛けなかったと思う?」
「兄さん……。その言い方だとまるでブラッドリーを……」
「ああ、そうだ。俺はブラッドリーを疑っている」
兄さんは腕組みすると頷いた。その仕草はとても大人びて見えた
だけど……。
「それじゃ、ブラッドリーが僕とエディットに向けてサンルームのガラス窓目掛けて石を投げたってこと?いくら何でもあまりに危険すぎるし、何故そんなことをしたのか理由が分からないよ」
「そうか?俺には何となく分かるけどな?」
「そうなの?」
「ああ。恐らくブラッドリーが本当に犯人なら、何故お前たちがいるあの部屋に石を投げたのかは容易に想像がつく。あいつはお前とエディットが仲が良いことに焼きもちを焼いたんだよ」
「え……?焼きもち?あのブラッドリーが?」
ブラッドリーはサバサバしていて、僕と違って男らしい性格をしているのに焼きもちを?
「ああ、そうだ。ひょっとするとブラッドリーはエディットのことが好きなんじゃないか?」
「え?」
そんなこと、一度も考えたことが無かった。
「だから2人が仲が良さそうな姿を見て……カッとなったブラッドリーは足元に落ちていた石を拾い上げて……投げた」
兄さんは右手を振り上げて投げるフリをした。
「……」
僕は黙って話の続きを待った。
「投げた本人にしてみれば、ほんの少し驚かす程度だったんだろう?ところが運の悪いことに、たまたまガラス窓にはヒビが入っていた。そしてこれまた運悪く、投げた石がヒビの部分に当たって派手に割れてしまった」
「そんな……」
「割れたガラスの破片からお前がエディットを庇って背中に割れたガラスが刺さってしまった姿を見た時‥‥‥ブラッドリーはさぞかし驚いただろうな」
兄さんはまだ13歳とは思えない、大人びた言い方をする。
「恐らく、怖くなって逃げだしたはずだ。その後姿をメイドに目撃されたんだろう」
「だ、だけど……見たと言っても後ろ姿だけなんだよね?だったらブラッドリーが犯人とはまだ決まったわけじゃ……」
ブラッドリーは僕の親友だ。
彼がそんなことをするなんて信じたくなかった。
「まぁ、今の話はあくまで俺の憶測でしかないからな。だから父さんや母さんにも話してはいない」
「兄さん……」
「まぁ、本当にあいつが心から反省しているのなら……何かしら言ってくるんじゃないのか?少しの間様子を見て見たらどうだ?どっちにしろお前は今週一杯、学校を休んで療養するように主治医に言われているからな」
「うん、分かったよ……」
小さく頷く僕。
「よし、それじゃ冷めないうちに食べよう」
「そうだね」
兄さんに促され、僕は再び料理を口に運んだ。
けれど、兄さんの話が尾を引いて……この夜の食事は何も味を感じなかった。
そして、翌日……予想もしていなかったことが起こった――。
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