第9話 チームリーダーの悩み(1)
機構本部近くの病院の一室。個室の病室のベッドに横たわるレッドを、他のメンバー達と緑川本部長が見守っている。
レッドはパープル将軍との戦いで怪我をして入院していた。幸い戦闘スーツのお陰で怪我は軽く、墜落時に頭を打ったこともあり大事を取っての入院だった。
「すみません、本部長にまでお見舞いに来て頂いて。怪我は軽いのですぐに復帰します」
レッドは恐縮して体を起こそうとする。
「無理はするな、レッド。今は仲間を信じて体を休めるんだ」
本部長は起き上がろうとするレッドをとめる。
「休んでいられません。私がパープル将軍に捕まってしまった所為で、敵を逃がしてしまったんですから」
レッドは本部長の制止も聞かずに、無理やり上体を起こす。
「そんなの気にせず、しばらくゆっくりしてろよ。後は俺達だけでなんとか頑張るから」
「すまん、剛士」
「前回活躍したからって強気だな、剛士」
頼もしい発言をしたイエローをブルーがからかう。
「ああ、最近筋トレの効果が出て来たように思うんだ。前回の戦いで自信が付いたよ」
「そうよね、大地と違って剛士さんは頼りになるわ」
ブラックが横から口出しして当て付ける。
「そう言えば、みんなの活躍のお陰で人気も回復して、資金難も改善してきたんだ。組織の長として礼を言うよ。本当にありがとう」
本部長はメンバー達に頭を下げた。
「それでご褒美という訳じゃ無いんだが、新兵器を装備したのだ」
「どんな兵器なんです?」
ブルーが問い掛ける。
「戦闘スーツに取り付けてある。変身してみなさい」
そう言われて、ブルーは「サイコチェンジ」と変身する。するとベルトの横に銃が装備されていた。
「これが新兵器ですか?」
ブルーは銃をホルダーから取り出す。リボルバータイプの銃だが撃鉄は付いておらず、発射の仕組みが分からない。
「それはサイコリボルバーと言うのだ。君たち超能力者が持っている精神エネルギーを弾に変えて打ち出す銃だ。弾の威力も自分で調整できるんだぞ。
一発ずつ自分の意識を弾に込めるイメージを作り、引き金を引けばエネルギー弾が発射される。外傷を与える武器ではなく、精神にダメージを与えるので、相手を怪我無く戦闘不能に出来るのだ」
「へえ、難しそうですね」
ブラックがブルーからサイコリボルバーを受け取り、細部を眺める。
「うむ、本部の地下に射撃場があるから、そこで練習するが良い」
「じゃあ、今から戻って練習しようぜ」
イエローの提案にメンバー達は帰り支度を始めた。しかしそれまでずっと黙っていたピンクはなぜか心配そうな表情で、レッドに何か言いたげだった。
「私達は本部に戻るので、ハヤテさんはゆっくり体を休めてね」
病室を出る前に、ブラックがレッドに声を掛ける。
「ああ、頼むよ。俺も退院したら頑張るから」
みんなはレッドにサヨナラを言い、病室を出て行った。
病室に一人取り残されたレッドは、やるせなさを感じた。
(みんなの役に立てない。いや、それどころか前回の戦いでは足を引っ張ってしまった……。これじゃあ、リーダー失格だ……)
その時、病室のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
レッドがベッドに寝たまま返事をすると、入って来たのはピンクだった。
「あっ、真心君……忘れ物でもしたのかい?」
レッドはピンクを見て、ベッドの上で上半身を起こす。
「ああ……そういう訳じゃないの。でも、みんなにはそう言って戻って来たんだけどね」
ピンクはそう言うと、少しいたずらっぽく笑う。
(もしかして、俺が悩んでいるのを知って戻って来てくれたのか?)
「最初に言っておくけど、あなたの意識を読んだから戻って来たんじゃないよ」
それこそ、レッドの意識を読んだかのようなタイミングで、ピンクはそう言った。
「私は意識を読む気が無くても、いろいろな人の思いが伝わって来るの。常に雑音の中で暮らしている感じよ。
でも、メンバーの中で、あなたからだけ何も伝わって来ない。意識はしていないかも知れないけど、きっとあなたは心をガードしていると思うの。だから一人で抱え込んじゃてるんじゃないかと少し心配になってね」
確かにピンクは無断で心を読んだりはしていないだろうとレッドは思った。
「ハヤテさんは真面目だから、休むことに責任を感じてるんじゃない?」
ピンクの表情を見て、レッドは心から心配してくれていると感じた。だからこそ正直に、不甲斐なさに悩む気持ちを打ち明けるか迷った。
(自分がリーダー失格だとウジウジ悩んでいると真心君に打ち明けたら、情けない男だと思われるんじゃないか?)
「ありがとう。でも心配しなくても大丈夫だよ。休んでしまうのは申し訳ないけど、その分復帰したら頑張るから、真心君もよろしく頼むね」
結局レッドは悩みを打ち明けることなく、隠し通した。
「なら良いけど……」
「ホントに大丈夫だから、みんなと一緒にサイコリボルバーの練習に行って来れば良いよ」
「うん、そうするわ。変なこと言ってごめんね」
ピンクは心配そうな表情ではあったが、それ以上は追及せずに病室を出て行った。
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