第6話 あーんする?から

 「はい。透、あーん」


と冬がご飯を俺の口元に運ぶ。


「いや。なんでだよ」

「透が食べさせてって言ったんじゃん。嘘だったの?」

「いや。言ってないですね。嘘つくのやめてもらっていいですか?」

「なんで!これは私の夢だったの!!好きな人に私が作ったご飯をあーんして食べさせてあげるの」


可愛すぎやん。

さすが俺を惚れさせただけはあるな。

と思ってるうちに、口の中にご飯がはいっていた。


「モゴモゴ」

「はい。たーんとお食べ」


ごくっ


びっくりしたわ。

でも


「美味しいな」

「ふふん。でしょー。まぁ私はこの日を夢見て料理の練習をしてきたんだから」


にこにこと嬉しそうに言う冬。

後で抱きしめてやると俺は決意した。

冬が可愛すぎたのだ。


「まだあるよ?」





 〜食後〜


「冬、この野郎。さっきはよくもやってくれたな。バックハグの刑だ」

「むしろご褒美だね。ありがと」


ご褒美ではないんだけどな。

可愛いので良しとしよう。

俺は冬を後ろから強く抱きしめる。


「んっ」と冬が声を上げる。

お構いなしに俺は冬の首元に顔をうめる。


「はぁー。幸せだ。冬可愛すぎるんだよ」

「んっ」

「可愛い。大好き」

「ひぇっ」と冬が声を上げた。


そろそろ勘弁してやろうと思い俺は黙って冬を抱きしめ続ける。

めっさいい匂いする。

柔らかい。

俺の腕に冬のお腹の柔らかさが伝わってきて……。


もにゅ、もち


やわらけぇ。

気持ちいいなどと俺は思う。


「ひゃっ。透なに!この手は?」

「ごめん。つい触りたくなっちゃって。柔らかくて気持ちいい」

「それって、太ってるってこと?」


冬がすごい誤解をしているので俺は驚いた。


「ちがうわ。女体は柔らかいんだよ。男と女では柔らかさが全然ちがうんだ!」

「そう……なの」

「うん」


もに、もち


「疲れが取れるー」

「まだ朝だよ?」

「昨日引っ越してきたばかりだから疲れが溜まってるんだ」

「確かに、そうか」


このどこか抜けているところも愛らしく思ってしまう俺はおかしいのだろうか。

あれからというものずっと冬を意識してしまって、愛おしく感じてしまう。

もう抑えられなくなってしまった。

この冬が好きという感情は抑えることができない。

うん。とりあえず幸せだからいいか。

と俺は考えるのをやめ、冬を感じるのに専念した。


「大好きだよ、冬」

「一日何回言うの?それ」

「うーん。冬を愛おしく感じてしまうごとに、かなぁ」

「ふーん。私も大好きだよっ。私も透にときめいてしまったから」

「ういやつめー」


このこのーと俺と冬はじゃれ合う。

愛おしすぎる。


「好き……」



————————————————————

第七話は8/26 20:00に更新します。

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