第2話 埋葬―とある夜―

 葬儀から、一週間ほどが経って。



 とある三日月が輝く夜――。



  


 墓場に。




 奇妙な音が鳴る。



 

 誰も居ない、墓地に。




 なにかをひっかくような音。


 何かを削り取るような音。


 何かを掻きむしるような音。


 

 繰り返し繰り返し。


 

 休むことなくその音は続く。


 何時間も何時間も。


 

 その音はしばらく続いたが。



 

 やがて。




 ある時。



 音が。

 


 ピタリと、止まる。



 何もない静かな夜が戻る。




 時は、日付が変わり。

 深夜に差し掛かったころだ。 





 何事も無かったかのような。

 平穏な空気。 



 



 それは次の瞬間。



 破られた。




 ドスッ、っと一際重々しい音が木霊して。




 それは現れた。



 地面の土を突き破った。




 真っ白な『手』が。


 墓地の地面から現れた。


 

 まるで月を掴むかのように。

 のばされた腕が、墓地の一画から。



 まるで新芽のように生えた。




 

 誰も居ない墓地で。



 それを見ていたのは。



 煌々と輝く三日月、ただ一人だけだった。




 

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