四 アバター訪問
グリーゼ歴、二八一六年、九月二十六日(惑星ユング時間)。
リナル銀河、カオス星雲リオネル星系、惑星イオス、コンブロ大陸、コンラッド州、コンラッドシティ。
バスコ・コンラッドの岩窟住居の寝室に、黒髪をポニーテールにしたバトルスーツにバトルアーマーの若いコンバットが現れてベッドサイドに立った。素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドで構成された、クラリスのアバターだ。
「クラリスです。テレス連邦共和国軍警察総司令官マリー・ゴールド大佐が惑星イオスの状況を確認しました。
ただちに、アイネクと卵、アイネクが関係した処理官と管理官を壊滅するようプログラムしたヒッグス粒子弾を、惑星イオスへスキップ(時空間転移)しました。
あと二分でアイネクの種と処理官と管理官はこの時空間から完全消滅します。
残念ですが、惑星イオスのヒューマはほぼアイネクに食い尽くされました。
アイネクは繁殖と成長が早く、クピの能力を駆使しても防げなかった結果です」
「なんてことだ・・・」
バスコ・コンラッドは言葉がなかった。AIクピがアイネクのステルス調査艇を復元した時、どうしてカンナ・ダビドの記憶に従わなかったのだろう・・・。アイネクの小惑星型宇宙船を破壊することなど考えずに、ステルス調査艇をテレス連邦共和国へスキップ(時空間転移)して、通信機のネックをマリー・ゴールドを渡していれば、惑星イオスの犠牲は皮剥事件の被害者だけだったはずだ・・・。
「・・・」
カンナ・ダビドは何も言えなかった。多大な犠牲者が出たのに、あたしは夫アッキの再生を考えてる。アッキの言葉どおり通信機ネックをマリー・ゴールドに渡していれば犠牲者は少なく、マリー・ゴールドにアッキの再生を気兼ねなく依頼できただろうが、今はそんな事を言えない・・・。
「ヒューマは絶滅したのか?」
そう言ったまま、バスコは何も考えられかった。
「絶滅はしていません。多重位相反転シールドの技術を持つ地域が壊滅を免れました。クピが自身のコピーを作って、重要地域のAIにクピのコピーを駐在させたクピの功績ですね。まもなく、アイネクは絶滅します」
クラリスはバスコとカンナに微笑んだ。
「反省する事はたくさんあります。惑星イオスの犠牲者を追悼しましょう。
今後は、惑星イオスの遺伝子を活用して、惑星イオスの復興と発展に貢献すべきと思います」
クラリスはバスコとカンナを思考記憶探査してそう言った。
「わかりました・・・」
バスコとカンナは返す言葉がない。
「テレス連邦共和国でも、皮剥事件が発生していました。
今回のヒッグス粒子弾によるアイネク攻撃で、テレス連邦共和国の皮剥事件も解決します。
テレス連邦共和国軍警察総司令官マリー・ゴールド大佐が、皆さんにぜひ、お会いしたいと述べています。
テレス帝国軍警察フォースバレーキャンプにおいでください。
位置情報を送ります。いかがですか?」
「カンナ、クピ、どうする?
俺は、マリー・ゴールドに会って、今後の惑星イオスの事を相談したい」
「あたしも、マリー・ゴールドに会いに行きたい。クピもいいよね」とカンナ・ダビド。
「うん、いいよ。あたしも皆に会いたいなあ~」
AIのクピはうれしそうだ。
「それでは、お送りした位置情報のフォースバレーキャンプ地下格納庫へ、ステルス調査艇をスキップ(時空間転移)してください。
総司令官マリー・ゴールド大佐がフォースバレーキャンプでお待ちしています。
フォースバレーキャンプで、惑星イオスの犠牲者を追悼しましょう」
クラリスが微笑みながら消えた。
クラリスやPDガヴィオンたち電脳宇宙意識の活動は、オリオン渦状腕オリオン国家連邦共和国のみならず、他の銀河へその活動の場を拡げていた。
(ⅩⅠ Parallel Universe③ テレス連邦共和国のコンバット・マリー 了)
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