Ⅸ Parallel Universe① ノア計画 テレス連邦共和国の礎

プロローグ

 時空間における生命の存在は限られている。そして、それら生命の姿形も、時空間を構成する物質が同じであるかぎり、大きく変ることはない。

 ある惑星の食物連鎖の頂点にヒューマノイドが存在すれば、その惑星が存在する銀河の他星系においても、ヒューマノイドが食物連鎖の頂点に君臨する可能性が高い。つまり、惑星を支配する生命体がヒューマノイドであれば、他の星系の惑星においても、ヒューマノイドが支配していると考えるのが妥当と言える。


 しかし、ヒューマノイドと言っても、種までは限定できない。あくまでも人型生命体としてのヒューマノイドであり、ヒューマンとは限らない。仮に、ヒューマンであったとしても、他星系、あるいは他銀河や他時空間からヒューマンが移動してきたとすれば、それまで惑星に居住しているヒューマンが、新参者のヒューマンと共存共栄するとは限らない。それは、過去、地球における民族間の紛争や、宗教間の紛争、難民と定住民の関係を見れば明らかだ。


 ヒューマンは実に好戦的であり、かつ、集団戦闘力を有する種である。

 ヒューマンの大いなる脅威は、その頭脳にある。種として築き上げ集積してきた知識を活用し、さらに高度化してゆく知能の持ち主たちが、大いなる脅威なのだ。ヒューマンは、これら知能の持ち主や知識遺産を使って、惑星上の他種を支配し続けてきた。そして、その支配は、今、宇宙へ、惑星移住計画『ノア計画』としてと拡がりつつある。


 ノア計画の未来に死がちらつき、座して死を待つか、危険が伴おうと生き延びる機会がある限り突き進むか、判断を迫られるなら、少しでも可能性がある方向へ進むのがヒューマンの生き方だろう。

 私はここで、パンドラの箱に残ったように、ヒューマンには希望があるなどと言わない。希望という言葉そのものは、未来が良き方向へ向かって進むだろうと根拠のない期待を示すだけで、悪しき方向へ進んだ場合の対処法を提示しないからだ。


 私は人類ヒューマンだ。他惑星のヒューマノイドの生き方を知らない。私なら、人類と動植物を搭載した惑星移住計画用球体型宇宙戦艦というノアの方舟に、強力なエネルギー転換機を付けて、強力な軍隊を同行させる。


 宇宙には人類の他にも生物がいる。それらがアニメのように、惑星移住する人類に対して友好的であるとは限らない。

 これまでの人類教育は、食物連鎖の頂点に君臨した地上の人類が、人類に対して行ってきた教育だ。人類が地上の他種を支配してきた結果、思考中でも他種を支配して、アニメや童話の世界で、動物に勝手な印象を与えた。

 だが、これからの人類は地球で生息するのではない。教育は、宇宙で生息する人類のための教育をして欲しい・・・。

 天文学者ジョージ・ケプラー博士はそのように考えていた。

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