第7話 Police officer(3)

「お台場にあるテレビ局が燃えてるってよ」


 生活安全課の村西が刑事課の部屋に入ってくるなりいった。村西は生活安全課員らしい、コワモテで陰では顔面凶器というあだ名で呼ばれている男だった。


「当たり前だけど、だれも出動しねえぞ」

 村西の声に樋渡が言葉を返す。


「そんなこと、わかってるよ。情報として、みなさんの耳に入れておいてやっただけだよ」

 笑いながら村西は言って、机の上に紙袋を置いた。


 その紙袋に海藤が目ざとく反応する。

「ムラさん。なんすか、これ」

「差し入れ。この店、流行ってんだろ。いや、正確には流行っていたんだろ……か」

 紙袋の中身はアイスクリームだった。台湾で流行っているアイスクリーム屋のもので、ものすごく甘くておいしいと、ネットで評判だったやつだ。


「まだ行列が出来ていたぜ。デッドマンたちの行列だったけれどな」

 村西は甲高い声で独特な笑い方をする。


 この店は、感染爆発前であれば3時間待ちの行列が出来るほどだった。

 味もおいしいが見た目がおしゃれということもあって、若い女性を中心に大流行したのだ。


「不思議なもんで、デッドマンになってからも行儀よく行列を作っているのな。あれって、本能的なものなのかな」

 紙袋の中身をみんなに配りながら村西がいう。


「まあ、おれが近づいたら行列は乱れちゃったけどさ。おかげで、拳銃を発砲することになっちゃったよ」

「えー、マジっすか。弾足りました?」

「大丈夫だったよ。ほら、おれって射撃うまいから。ヘッドショットで最低限の弾薬消費さ。それにヤー公どもの事務所から奪ってきたコルトXM177機関銃もあるからな」

「え、あれってモデルガンじゃないんですか」

「マジモノよ。今度、海藤にも撃たせてやろうか」

 普通であれば異常な会話であるが、これが日常の会話となってしまった世界なのだ。

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