俺も先輩を洗いたい

「待っていたよ、愁くん」


緊張して、はにかむ先輩。

バスタオルを巻いているから……残念のような、少しホッとしたような。いや、だがこれでいい。


「お待たせしました。俺はどうすれば?」

「お世話になっているの、わたしだから……愁くんの体を洗ってあげるね」

「お、俺の体をォ!?」


思わず変な声が出ちまった。


「う、うん。看病してもらったし、普段いろいろ貰っているから」

「そ……それくらい当然のことですよ。見返りなんて、別に」

「遠慮しないで。ほら、椅子に座って」


俺は先輩の指示通り、バスチェアに腰を掛けた。背後には……半裸の先輩が。ドキドキするし、ワクワクもする。


緊張しまくっている俺だが、なるべく動揺を見せないようにした。


だが。


先輩はシャワーを手にし、細い指を俺の脇に通してきた。



「ひゃあぁッ!?」


「ご、ごめん! そんなつもりなかったんだけど……」

「び、びっくりしました。先輩、どこを洗うつもりですか!?」

「まずは前側かなって」


「な、なるほど」



心臓がバクバクなんですけど……。いや、落ち着け俺よ。冷静になれ俺。まだ始まったばかり。ばかりなのだが、豪雨のような興奮がおさまらない。

しかしそれでも我慢だ。

この時間を俺はまだ楽しみたい。


「続けるね……」

「はい……」


ぎこちない動きで先輩は俺の体を洗ってくれた。……気持ちいし、心地よい。ひとつひとつの動作に気持ちが篭もっているし、とても丁寧だ。



「ここ……固い」

「そ、そこは……上腕二頭筋ですからね」

「男の人ってこんな固いんだ」


「俺は少し鍛えていますからね。ほんの少しですけど」

「そうなんだ。トレーニングとかしてるの?」

「先輩を守るために少しでも強くなろうと、たまに腕立てしているんです」

「そうだったんだ。嬉しい」



……ふぅ、危なかった。先輩の吐息が首に当たるものだから、くすぐったくてたまらなかった。


ある程度洗って貰って、次に先輩はボディソープを俺の体に塗りたくってきた。


「……ッッ」

「き、気持ちい?」


「……はい、とても。先輩の指使い……えっちです」

「そ、その……愁くんの股も綺麗にした方がいいよね」


「そ、そこは! 大丈夫です! 自分でやりますので」

「でも……」

「そこには魔物が住んでいるので止めておいた方がいいです」


「ま、魔物?」


「とにかく、そこは遠慮しておきます!」

「遠慮することないのに」


 先輩は残念そうにシャワーを当ててきてくれた。


「ふぅ。すっきりしました。次は先輩、ですかね」

「へ!? わ、わたしも?」

「俺だけっていうのも不公平でしょう。先輩を洗わせてください」

「…………あ、ぅ」


 鏡越しで見ると先輩は顔から煙を出していた。……俺だって恥ずかしいさ! 死ぬほど恥ずかしい。でも、先輩とこうしたかった。だから、今度は俺の番なのだ。


 勇気を出して俺はバスチェアから立つ。


 先輩を座らせた。


「さあ、覚悟してください」

「……心の準備出来ていたはずなんだけど……いざとなると死ぬほど恥ずかしいよ」


「それは俺も同じです。我慢してくださいっ」

「わ、分かったよー…」


 ようやく腹が決まったのか、先輩はバスタオルを外していく。……おぉ、綺麗だ。背中は傷や染みひとつなく、真っ白。なんて綺麗なんだ。


 揺れ動く胸が見えそうで見えない。だが特盛だ。

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