第73輝 変身
「それでは、両者。変身を!」
所定の位置に着いた俺と刄田を見て、キトウ先生が右手を上げる。
それと同時に、刄田はポケットから取り出した消しゴムサイズの宝石を握りながら、俺は握っていた
「
「
憎らしいが愛らしくはないワードを呟いた瞬間、相変わらずの激痛が襲ってきたことで、クソ痛いことには痛いんだが、同時に安心感も感じる。───変身できて良かった〜!!
刄田を包む光を背景に、俺のそれなりにある胸の間からこの数週間で見慣れた剣が生えてくる。
この変身の時の激痛も慣れたもので、最初のように変身で気を失うなんてことも無くなってきている。だが、今回の変身に伴う痛みは、いつもの痛みよりも弱い気がする。女から女の変身だからだろうか? まぁ、死ぬほど痛いのには変わりはないんだけど。
───両手に胸、両足と光が纏わり付いていき、光が収まると、宝石剣が握れと言わんばかりに柄をこちらに向けてくる。
剣を握り、刄田の方を見れば既にあちらも変身を終えたようだった。
「魔法少女リーテタンザナイト。護るため、我が刄を振るう……!」
腰に提げた刀を抜き放ったリーテは、その刀をこちらに向けながら戦闘参加の宣言を静かに、それなのに力強く、呟く。
「体験入学生も、戦闘参加宣言を」
「あぁ、なるほど」
所謂決闘の前の名乗りを、戦闘に参加する時に魔法少女がする宣言で行うということらしい。
───そういえば、まともに戦闘参加宣言するのは初めてかもしれないな。トカゲ擬きのSOの時も適当にしたような気がするし、それ以降も特にした覚えは無い。さて、どうしたものか……
「魔法少女クレイアンブロイド───」
それっぽいことを言わなければならないと、一旦名乗るだけ名乗ってから考える。
だが、少し頭を捻っても特にそれっぽいものが思いつくことも無く。
───暫く頭の中で悩んで、思い付いたのは俺が幾度となくお世話になった願いの魔法。
「───光の速さで導く者なり」
語尾に昔、古文の授業で出てきた断定の助動詞───だったっけ?───がくっ付いてしまったのは、俺のちょっとした遊び心が暴走した結果と言えよう。
俺の宣言を聞いたキトウ先生は、満足したように頷いてから少し離れた位置に移動する。
俺とリーテを囲むサークルからキトウ先生が出た瞬間、そのサークルに沿うように薄い魔法の膜で囲まれた。それと同時に、俺の体を包むような魔法が発動したのを感じる。多分、これがダメージを精神ダメージに変換する魔法なんだろう。
「魔法は問題なく発動しているようだな。良し、2人とも準備はいいか?」
「はい、問題ありません」
「こっちも」
軽く宝石剣を構えると、それに合わせてリーテも刀を正眼に構える。
キトウ先生は改めて俺たち二人の様子を見て頷き、振り上げていた右手を勢いよく振り下ろした……!
「では───始め!」
「参る!」
始まりの合図とともに急接近してくるリーテを見ながら、俺は構えた宝石剣で彼女の刀を受け止める体勢を整えた。
「来い───『
もう何度使ったか分からない願いの魔法を用意して。
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