TS魔法少女クレイアンブロイド! ───世界を、救いに来た!

淺間 葵

第1輝 日常

「な、な、な……」


 なぁ、魔法少女って知ってるか?

 普通じゃ有り得ない、魔法なんて力をこの世界で唯一使える存在。突如として現れた未確認生物【SO】───怪物やらモンスターやら魔物やら呼ばれているそれに唯一対抗出来る少女たち。それが、魔法少女。


「なんじゃこりゃあああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ───!!!!」


 ───この物語は、19歳専門学生の俺が、そんな魔法少女になって戦う話。





「ふぅ……ただいま……」


 学校から1時間弱かけて帰ってきた俺は、誰もいないリビングに入り、1人で座るには少し大きめなソファーに腰掛ける。

 今日は寄り道してから帰ってきたため、家に着くのが遅くなってしまった。いつもだったらもう2時間程度早く帰宅できていたはずなのだが、時刻は23時を回っていた。

 流石にこの時間から何かを食べる気にもならない。ソファーに置いたカバンの中からノートパソコンを取りだし、学校で相も変わらず押し付けられてしまった仕事を始める。

 うちの専門学校は特殊だ。何せ、あの【魔法省】に関わる仕事について学ぶ学校なのだから。

 魔法省。【シンギュラーデイ】を皮切りに次々と現れた怪物、SOに対応し、その唯一の対抗手段の魔法少女を適切にするために設立された組織だ。

 魔法と言うぐらいだから、国の組織だと思われるかもしれないが、実はそうではない。───昔はそうだったが。

 魔法省という呼び名は元々国の組織であった時の名残なのだとか。なんでも、別の名前に変えようにも、いい名前が思いつかず、当時は他のことに手一杯であったために名称変更なんてやってる暇はなく、結局そのままになってしまったのだという。国的には、早く名称を変えてほしいらしいが。

 そんな組織に入れる可能性があるとあって、うちの専門学校は入試倍率がかなり高い。

 まぁ、それもそうだろう。今ではアイドル並みの人気を誇る魔法少女に関われるかもしれないし、そうでなくても魔法を身近に見れる、触れるかもしれないとあれば、皆目を輝かせる。

 ───俺は違うけど。なんて考えをかき消し、目の前の仕事に意識を集中させる。

 と言っても簡単な仕事だ。出現したSOの等級分けと、新しく誕生した魔法少女の同じく等級分けと前衛後衛支援の分類だ。

 SOはその強さによって、等級というものが割り振られる。弱いものから、6等級、5等級、4等級、3等級、2等級、1等級といった具合に。

 まぁ、【イレギュラー等級】なんてものもあるが、そちらは未だに1度も確認されていないから、殆ど関係ないだろう。

 因みに、6等級がロケットランチャーを全方位から打ち込んで倒せるレベル。5等級がミサイル数発でやっと倒せるレベル。4等級以上は現代兵器が一切通じず、4等級は暴れれば街がひとつ消える。3等級は日本だと県が2つ3つ地図から消える。2等級は国が、1等級は大陸が消えるとされている。まぁ、1等級のSOも、【南アメリカ大陸消失事件】以降確認されていないが。

 更に、現在まで一度も確認されていないイレギュラー等級の認定条件は少し特殊で、単純な強さだけでは選ばれない。闇の魔法を操るSO、それがイレギュラー等級にあたるとされている。


「ふぅ」


 淡々と資料を読み、20数件のSOの等級分けを終わらせ、魔法少女の等級分けと職業分類の仕事に移る。

 こちらはすぐ終わりそうだ。何せ2件しかない。当たり前か、そうバンバン新しい魔法少女が現れても───やめておこう。これ以上考えるのは。

 魔法少女の等級分けはSOの等級に基づき決められる。具体的には、同じ等級のSOに『4人で戦い必ず勝てるか』だ。

 魔法少女は基本チーム───4人1組のスクワッドで動く。

 彼女たちがスクワッドで動く理由、それが安全で、確実だからだ。

 例えば、1等級の魔法少女は現状4人しかおらず、束になってやっと1等級のSOに勝てるレベル。

 ただでさえ人手不足なのだ。その貴重な人材を無闇矢鱈と減らすわけにはいかない。故のスクワッド。

 つまるところ、安全対策という訳だ。


「4等級ね……」


 新しく魔法少女に覚醒した2人の資料を見ながらつぶやく。

 今でこそ6等級の魔法少女は見なくなったものの、覚醒直後から4等級とは……なかなかの逸材やもしれんな……

 そんなどこかのお偉いさんのジジイみたいなことを考えつつ、2人の前衛後衛支援の分類をし始める。

 前衛後衛支援の分類では魔法少女を、前衛を担う【アタッカー】、後衛から援護する【シューター】、特殊な力を用いて支援する【サポーター】の大きく3つの種類に振り分ける。

 まれに、2つの分類分の働きができる【ツーウェイ】や、前衛も後衛も支援もこなせてしまう万能【ワンマン】も現れるが、この2人の資料にそれっぽいことは書いてない。

 今1度資料に目を通し、赤基調の衣装に包まれた魔法少女バルクガーネットをシューター、対して青基調の衣装に包まれた魔法少女リーテタンザナイトをアタッカーに分類し、今日の仕事を終える。

 部屋の壁に立てかけられた時計を見れば、短針が表す時間は2時を優に超していた。

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