第8話撫でた微温い風
「元気だしなって、透杞。可愛い顔が台無しだって」
「そんなん言われても……由奈に可愛いなんて言われても、嫌味に聞こえるんですけど」
「そぉ〜うぅ?普通に可愛いじゃん、透杞。周りからは目立ってないだけでさぁ」
「ああ〜もうー!からかわないでよ、由奈」
登校中の私と漣は、毎日賑やかな会話を交わしていた。
自身の感情を犠牲に他人を救う嘘つきな
歩道から海と浜辺が見渡せる通学路を歩んで、自宅と高校を往復していた。
車道を挟んだ歩道には色の剥げたバス停がぽつんとあって、ノスタルジックに浸ることもあった。
海と浜辺、色の剥げたバス停という景色は見慣れた筈なのに、漣由奈の姿が溶け込むことなくゆったりと刻が進む光景は、虚しいものに見えた。
通学路でもあった住宅が密集した狭い路地裏も、彼女の姿がないとかつては歩いた通学路なのかわからなくなる。
漣が浮かべた憂いた表情に気付いてさえいれば、
あの
愚かな私を庇わなければ、
由奈ぁぁ、許してほしいなぁ……私が生命を絶とうとしたこと……
私がオバさんになっても、柔らかい笑みで私の弱音に寄り添ってくれてるだなんて思ってた。
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