第7話 『自分、みいつけた』『令和2年、それぞれの秋』の裏話

 今回は『一蓮托生いちれんたくしょう』の登場人物と繋がる設定にした『自分、みいつけた』の登場人物について語りたい。

 『自分、みいつけた』は1985年に執筆したオリジナル作品だ。高校生の少女、関本せきもと定子さだこと友人の村橋むらはしやちよが河原で見つけた記憶喪失の青年の正体を探る。実は青年は15年前行方不明になった幼児だった。彼は無事家族の元に帰ることが出来るのか、そして青年に恋をした定子は報われるのか、という内容である。

 例によって主な登場人物の名付けについては名付け辞典と家紋図鑑にコンパスを刺す方法で行われた。ただし、『カクヨム』にリライトするに辺り、まもるの弟をやちよのボーイフレンド、ちからとして再設定したため、年齢や名前を設定し直した。力もオリジナルでは名前だけで設定がなかったキャラクターである。士の名字『田城たしろ』もオリジナルでは『田代』だったが検索で引っかからない漢字に変更した。


 本作の特徴は定子とやちよの交換日記パートが挟まるというスタイルだ。私には交換日記をするような友人はいなかったが、大学ノートに日記を書いて担任に毎日提出することになっていた。シンエイアニメ版『パーマン』でも交換日記の話が時々あり、交換日記に憧れていたのかもしれない。


 また、本作は自分の作品世界の共通架空設定として登場する町『陽光原ようこうばら』の初出作品でもある。モデルとしては、私の通っていた短大のあった茨城県の土浦、つくば周辺をイメージしている。「流川ながれがわ」にあたるのは堤防に遊歩道のある「桜川」になるだろうか。オリジナルでは別の名前だったが、『カクヨム』に発表する前に検索したところ同じ名前を使っている作品があったので変更した。『一蓮托生』では実在地名を使っているので繋げたことによって浮かないかが目下の心配である。


 本作は定子の家である喫茶店『リッチ』が重要な舞台となっているが、当時の実家周辺に喫茶店はなく、TVなどで見たイメージが元になっている。『リッチ』が「珈琲コーヒーとクレープの店」なのは、当時の流行スィーツが「クレープ」だったからである。


                    ○


 『令和2年、それぞれの秋』は2020年に書き下ろしたオリジナル作品だ。『一蓮托生』の主人公、横澤よこざわかつらと弟の康史郎こうしろうの後日譚に、『自分、みいつけた』の登場人物を絡めた物語である。ここで士と定子の娘、関本みどりと横澤康史郎のひ孫、鳥居とりいしょうが知り合い、『俺たち「連星コンビ」』のサダミツとトキヒコに繋がることとなる。


 結婚して妻の姓になった士と定子の子ども達、長男の『直利なおとし』は『自分、みいつけた』で士に付けられた仮の名前から、長女の『翠』はキーアイテムである緑色の石にちなみ、漢字をひねった。鳥居『翔』は名字のイメージからつけた。


 かつらの夫となる京極きょうごくたかしや、康史郎の妻となる高橋たかはし柳子りゅうこは本作の執筆時に初めて設定された。「隆」は思いついた名前を検索して引っかからなかったので採用、「柳子」は「かつら」が「かつらの木」にちなんでいることから樹木にちなんだ名前にしようと考えて設定した。名前でひねった分、名字はどうせ変わるし一般的な物にしようと「高橋」にしたのだが、『一蓮托生』執筆時に兄の名前で苦労することになる。


 本作がなければ長編『一蓮托生』の執筆には至らなかったので、私にとってターニングポイントとなる作品である。

 順番から行くと次回は『一蓮托生』の番だが、カクヨムコン8に再応募する予定なので、しばらく様子を伺いたい。


カクヨム版『自分、みいつけた』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054898625757


令和2年、それぞれの秋

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934193864

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