2022.9.9(fri)段ボールを求めて



現実的にプラネタリウムを教室でやるとなると、まず暗幕の問題が立ち上がった。数に限りがある暗幕は三年のお化け屋敷をやるクラスなどから優先的に配られる。一年の教室に届く頃には、部屋を真っ暗にできるだけの量がないとのことだった。

そもそも部屋を暗くして教室一面に星を映すにはどうするか、まだ決めていなかった。小さな球体にキリで穴を開けるには限界がある。


「じゃあいっそのこと、教室埋めるくらいの大きいドームをダンボールで作ればいいんじゃない?」

篠宮のアイディアにやっとクラスの方針が決まる。

当日のナレーション組は星座の勉強、その他の準備組は方々で段ボールをかき集め、半球体の大きなドームを作り、そこにキリで星座を描く。が、今日はとりあえず全員で段ボールを集めてこようと話がまとまった。


菜都奈も勇んで学校を出たはいいが、みんな考えることは同じだった。高校の近くでは段ボールの収集がうまくいかない。高校に近ければ近いほど、同じ考えを持つ他クラスの人たちとの取り合いになる。

二件目のスーパーでも「さっき別の学生さんが持って行っちゃって……」と言われた菜都奈はガックリと肩を落とす。次はどこに行こうか、と手ぶらで考えたが、いい案は出ず教室に戻った。


するとそこには菜都奈と同じように断念したクラスメイトたちが集まっていて、教室に入ってきた手ぶらの菜都奈にため息をこぼす。さながら負け確のスポーツ観戦をしている有様だった。

「やっぱこの辺だと難しいよね」

前の席の田中も帰ってきていたので声をかける。田中は「まあね……」とだけ呟く。元気がなさそうだ。


「…………あの、私」

そう言って席を立ったのは窓際の高梨だ。髪が顔を半分隠している。

「よかったら私、週明けに持ってくるよ……家の近くのスーパーとかならあると思うんだ」

へえ、とみんなが目を丸くする。高梨の後ろの席で佐倉が訪ねる。

「高梨さんってどこ駅だっけ?」

「小山駅……二時間くらい遠くて、家の近くには高校もないから、多分だけど段ボール余ってると思って」


クラスのみんなは「小山?」と首を傾げている。二時間もかけて七草高校に通っているクラスメイトがいたとは。けれど佐倉が「俺その駅の……ええと、五個手前だ」と言ったので菜都奈はさらに驚いた。みんな結構遠くから通っているらしい。

「月曜の朝、途中からだけど手伝うよ。電車合わせて行こう」


佐倉と高梨の話がまとまったところで、行動力のあるグループが段ボールを持って教室に戻ってきた。

「まじ電車に乗って段ボール貰いに行くとかウケるよな!」

時岡の元気な声が、六限の終わりのチャイムと重なる。彼らの抱えている分ではまだ三分の一にも満たない数だろうけれど、ひとまず光明を見出して菜都奈は安堵した。

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