主人公がゲームファンタジー世界でヒロインを救う話

仲仁へび(旧:離久)

第1話 主人公ライト




 たくさんの屍が積みあがっている。


 その屍の中、金髪の男は容赦なく剣をふるっていた。


 確認するのは、屍の中を。入念にチェックして、まだ息のあるものがまぎれていないかどうか。


 一人ずつ剣を突き刺していけば、死んだふりをした人間があらわれる。


「なぜなんだ! なぜこんなひどい事ができる!」


 金髪の男は答えない。


 容赦なく剣を振り下ろして、その声の主を葬り去った。


 そうしてすべての作業を終えた金髪の男は、空中に四角いホログラムを出現させて、


 そのホログラムは四角いゲーム画面のような見た目だった。金髪の男は、そこに書かれている数字を確認する。


 それと同時に、


「なぜって、ここはゲームの世界なんだから、何しようが勝手だろ?」


 金髪の男はそうつぶやいてから、歩き去る。


 それは、次の世界に、ゲームに参加するため。








 世界を移動するつかまの間。


 金髪の男、ライト・フォルベルンはゲームマスターと話をしていた。


 彼が向かい合う存在は、神々しい光を纏った女だ。


 ゲームの神と呼ばれている存在である。


 ライトはそのゲームの神に話しかける。


「つまり、次の世界はループを繰り返してヒロインを助ける世界なのか」


 ゲームの神は頷いた。


「でも、その能力は現地調達ってわけね。ちょっと面倒だな」


 面倒臭そうな表情になるライト。


 そこでライトは、ゲームの神から新たな力を受け取る。


 それは探し物を見つける能力だった。


 ライトに宿った能力は、本人の求めに応じ、羅針盤という品物になる。そしてライトの手の中に現れた。


 ライトが頭の中に探し物を思い浮かべれば、この羅針盤で探す事ができるようになった。


「なるほど、初期装備はこれか。今回の異世界転移は、そこそこってところだな」


 そう言ったライトは旅立つ。


 次の世界へ。


 ゲームを楽しむために。








 新たな世界に渡ったライトは、血だまりの家の中にいた。


 ヒロインを探してその場所にやってきたが、どうやら最初のイベントはすでに起きてしまったようだった。


 ヒロインの家は、何者かに襲われて、争いがあった後。


 しかも、その騒動を起こした侵入者によってさらわれてしまったようだった。


 ライトは、何か手がかりがないかと家の中を探索する事にした。


 タンスをあけたり、各部屋の様子を伺ったりする。


 被害者たちが抵抗した後から、犯人に繋がる手掛かりがいくつか見つかった。


 そうしていると、その家に人が訪ねてきた。


 合鍵を使って入って来たのは、ヒロインの友人らしかった。


 人数は男と女一人ずつで、二人。


 彼等の会話を聞くに、日ごろから家の者に招待されたりして、ヒロインと一緒に遊ぶ深い仲らしかった。


 男の名前はガイアス。


 女の名前はアイナ。


 彼等は家の中にある血だまりに動揺し、辺りを捜索、ヒロインの無事と行方を案じるようになった。


 そんな彼等の前にライトは姿を現す。


 それは、ヒロインの行方をめぐって協力するためではない。 


 ライトの探し物を彼等の片方、ガイアスが持っていたからだった。


 ゲームの神からしらされた情報は正確。疑うことはしなかった。


「ガイアス、ヒロインを助けるために、君のループの力が必要なんだ。君達の友人は僕が必ず助けてやるから、渡してくれないか?」

「こんな状況で、君の言う事なんて信じると思ってるの?」


 一触即発の雰囲気。


 しかしライトは戦闘を回避した。


 ヒロインの家の中に残されていた瀕死のペットを使って、隙を作って、不意打ちを行った。その小細工でライトは、二人に勝利する。


 その後は、ガイアスから探し物である「ループの力」を奪い取った。


 それと同時に、アイナからは「主人公」の力も。


「なんだ、君が主人公だったのか。じゃあ、僕が代わりに全部やっといてあげるよ」


 人の縁をひきよせる力、イベントを発生させる力を秘めた「主人公」。


 それらを手にしたライトは、ヒロインを探すために新たな地へ旅立った。







 風車が立ち並ぶ地域。


 風の町と呼ばれるその場所ウンディにライトはたどり着く。


 さっそく、羅針盤を使ってヒロインと出会った。


 使用人としてとある屋敷に働いている人物。そのヒロインの名前はレミィ。


「大丈夫ですか? 怪我をしてるみたいですけど」


 ライトはけが人を装ってその屋敷に厄介になる事にした。


 そこで分かった事実は、レミィがその屋敷の中で、必ず一週間以内に死ぬらしいという事。


 ライトは何度かループしてその事実を把握した。

 だから、五度目のループを経た後、ライトはレミィを助けるために行動を起こした。


 その屋敷は、各地で人をさらっている悪の組織……「禁忌の果実」の拠点。その一つだったらしい。


 だからライトは、己の戦闘力で悪の人間を倒した。


 それでレミィは死ぬ事がなくなったが、新たな問題が発生した。


 レミィはどうやら特別な体質だったらしい。


「禁忌の果実」内でその情報が共有されていたため、レミィの命を狙う者達はひっきりなしに現れた。


 レミィは何度もその度に死亡する。


 ライトは様々な周回を経て、彼等の襲撃のタイミングを完璧に把握し、レミィを救っていった。


 やがて、何百回ものループの果てに、「禁忌の果実」の全ての襲撃をはねのけた。


 レミィは命を助けてもらった礼に、ライトの力になると言ったのだった。






 その後、「禁忌の果実」を壊滅させるために行動するライト。


「禁忌の果実」と戦っている「ネクト」という組織と合流し、連携をとる。


「禁忌の果実」は一時期、「ネクト」に入ったライト力で、壊滅するかのように思われた。


 しかし、根絶やしになる事はなかった。


「禁忌の果実」の存在がなくなる前に、巨大な人造生物グアドが暴れまわって、いくつもの町や村が壊滅したからだ。


 ライト達もかなりのダメージを受けた。


「禁忌の果実」の目的は、レミィやもう一人の「予備」を使って、人造生物グアドを操り、世界を支配しようとしていた。


 その目論見は成功。


「禁忌の果実」を倒す事ばかりに夢中になっていたライト達は、だしぬかれてしまった。


 だから、ライトは新たなループでは、レミィだけでなくもう一人の「予備」も助ける必要があった。


 その「予備」の名前はナトラ。


 真っ白な髪が特徴的な少女だった。


 ライト達は彼女が隔離されている施設に入り込み、ナトラを助ける。


 そして、まだ弱い人造生物グアドも倒す事になった。


 ループを駆使して、グアドを倒したライト達は、「禁忌の果実」を壊滅させる事に成功。


 ヒロインであるレミィやナトラ、少女の平穏を守り、多くの人々の平穏も守る事ができた。






 だから、


「ゲームクリアだ。今回はそこそこやりごたえがあったな」


 与えられたゲームをこなしたライトは次のゲームをこなすために準備に入る。


「どうしてこんな事を!」

「仲間だったんじゃないのか!」

「お前なんて偽物だ! 本物のライトさんであるわけがない」


 NPCやメインキャラたちを倒して、経験値を収集。


 装備や持ち物をうばって、痛んだ品物ととりかえる。


 そうやって、レベルアップをはかったライトの前にヒロインが立ちふさがる。


「あなたなんて死んじゃえばいいのに」


 ヒロインが放った呪いの言葉は、ライトの心には微塵もひびかなかった。


「君はヒロインだけあって強いし、そこそこ可愛いから傍においておくか」


 ライトは難易度調整のために使わずにおいた洗脳の力を使って、ヒロインの意識を操った。


 ライトは、反抗する事のなくなったヒロインを連れて、次のゲームの地へと向かっおうと考えた。


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