第58話 ダイヤモンドフットボール その1

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♪ パッパラパー パー 


♪ パッパラパー パー 


♪ パッパラパー パー パー


「サッカーを愛する皆さん、ご機嫌いかがでしょうか。

 本日は多摩っ子ランド天然芝サッカー場より、東京ビクトリーズVS川崎フリッパーズの試合をお送りします。

 提供はみつび…………」


「ちょっと、あんた、何言ってんのよ」とここで遥のツッコミが入った。


 知ってる人は知ってるよね。


 さて、このボケ、一体何人の方が分かるでしょうか?



 というわけで、ビクトリーズU-13の今シーズンの 優勝を占う三連戦の最終戦。


 東京ビクトリーズVS川崎フリッパーズの試合、実質今日の試合を取った方が今シーズンのリーグ戦の覇者となる試合。


 否が応でも盛り上がってまいりました。

 


 観客席には両チームの保護者や関係者の皆様だけでなく、純粋にサッカー好きのちびっこやおっさんもやって来ている。


 では、紹介をしていきます。


 本日のお重の一段目はサーモンのテリーヌとオマールエビと野菜のゼリー寄せ。


 そして、フォアグラトリュフのパテに自家製スモークサーモンと北里家のスペシャリテ。


 今日の試合に対する意気込みが伝わってきます。


 二段目は、ズワイガニのコロッケと黒毛和牛のゴロゴロコロッケ、そして黒豚と黒毛和級のメンチカツの揚げ物天国。


 三段目はローストビーフの盛り合わせ。バラの花びらのようにきれいに盛り付けられております。さすが料理学校の先生です。


 四段目はサンドイッチの盛り合わせ。ローストビーフにスモークサーモン、烏骨鶏の卵サンドに薩摩黒豚のヒレカツサンド。


 五段目はこれはうれしい、お母さん自家製のいなり寿司と卵焼きの入った太巻きです。やっぱ日本人としてご飯は欲しいよね。

 


 遥も莉子も弥生も俺も「キャー」と歓声を上げている。


 最近、メインはもしかしたらこのお重のような気がするんだけれど、それもまたよし。


 遥も弥生も莉子も明らかにこのお重目当てで試合観戦に来てるよなー。もちろん私もです。


 なお、本日は司より、絶対にすべて一品づつ残しておけと言われてます。


 先週はちょっと調子に乗ってしまいました。ごめんね、司君。



 さて、できる事なら、美味しい白ワインでも飲みながら優雅に観戦していきたいのですが、ここは炭酸水のペリエで我慢しておきます。


 あ、お母さんすみません、レモンのスライスありませんか?



 さて、ピッチの方に目を移すと、なにやら司の周りに川崎の例の4人が集まっています。きっと司と旧交を温めているのでしょう。


 そして、そこに俺が居ないのはちょっと寂しい。ねえねえ、この物語の主人公ってたしか俺ですよね。

 


 すると、三苫君がなにやら物珍しそうな顔でおっかなびっくり司のお腹をなで始めました。それを見ていた田中君と三芳君も我も我もと司のお腹に集まってきます。


 そして少し離れた場所から板谷君と司がお互いに何かを話して笑い合っている。きっと「おっきくなったなー」「お前と一緒にするなよ」みたいなことを言ってるのでしょう。


 と、そこに、翔太がやって来て、川崎の4人を追っ払っています。どうやら司のお腹は自分のものであると所有権を主張しているみたいです。


 司の前に立ちふさがり、川崎の4人にあっちいけの仕草をしています。


 後ろ髪をひかれるような感じで、自分たちのチームに戻っていく四人。そしてそれを見届けてから安心したように司のお腹にハグする翔太。

 


 …………一体我々は何を見せつけられているのでしょうか。


 既に遥とお母さんは、見て見ぬふりしていなりずしを食べています。


 お母さん、僕にも一つ取ってください。



 という訳でフォーメーションはビクトリーズは3-4-3でいつものメンバー。トップは相変わらずの司です。


 川崎さんは4-3-3。CBに板谷君。アレ、また背でっかくなってないか?なあ司、体を大きくするってこういう事なんだぞ。


 そして中盤の真ん中に三芳君、トップの両脇に三苫君と田中君。基本のフォーメーションは去年から変わってません。


 さあ、激しいフットボールの始まりです。


 あ、おかあさんすみません、そこのカニクリームコロッケ取ってもらいませんか?

 


 フリッパーズのキックオフからゲームはスタート。


 すると、いきなりの三苫エキスプレスの発車です。おい、虎太郎、少しは体寄せろ。前からしっかり守備しとかないと今日の試合チンチンにされちゃうぞ!!


 ビクトリーズの右サイドが一瞬で破壊されます。虎太郎-涼ちゃんー山村君と縦のラインをあっという間に突破する三苫君。


 そこに健斗が立ちはだかったと思ったら、虎太郎のスライディングタックルが成功。


 良く戻った、虎太郎、それでこそビクトリーズのFWだ。現代サッカーではフォワードの守備が必要不可欠なんだぜ。


 三苫君にあっさりぶち抜かれるも、そこから必死に帰陣して間一髪で間に合った虎太郎。


 ベンチに向かって親指を突き上げる姿が凛々しい。


 ってか、三苫君、また速くなったんじゃないの?


 俺も膝が完治したらあれと対峙するのか……なんだか気が重くなってきた。



 三苫君を止めたと思ったら、今度は田中君が……左かと思ったら今度は右とフリッパーズの怒涛の攻撃が止まりません。


 そして、それを他人事のように見ている我らが司。


 川崎のDFは司を無視してビクトリーズ陣内にラインを上げる。


 司は取り残されたようにセンターサークル内で一人たたずむ。


 とりあえずさゴール前に戻れよ、デブ。DFを引き延ばすためにトップに張ってるんだろうけれど、ガン無視されてるじゃねーか、お前。



 試合が始まってからというもの、本来3-4-3のフォーメーションのビクトリーズは、真ん中の両ウイングバックがDFラインまで下がり、



 そこの空いたスペースに翔太と虎太郎が入って、実質5-4-1のフォーメーションでブロックを組みどうにか攻撃をしのいでいる。


 トップに司が張ってDFラインを引き延ばそうとしているが……効果無し。



 さすがに司もヤバいと思い、ゴール前まで戻ってこようとしたが、一歩間に合わず、田中君のシュートのこぼれ球を三芳君が押し込んでゴール!!


 試合開始6分、一方的な試合展開のまま、フリッパーズが先取点を取った。

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