5:四天王“神速の”シュネイルは勇者と対峙する
私は急いでいた。囚われた同胞を救うために。
「ここは通行止めだ」
にもかかわらず人間風情に道を阻まれた。
その者たちはあらかじめ私がここを通ることを知っていたかのように、武器を構えていた。だが偶然だろう。待ち構えられようはずもない。私が今日この道を
「なんの真似だ、人間」
貧相な二人組だった。見たところ冒険者か。我ら魔族の領域を荒らし、魔王様の心痛の種になっている無法の
ひとりは女。斥候か、盗賊か。大した脅威にはならないことは一目でわかった。
もうひとりは男。剣士だ。他の貧相な装備とは不釣り合いな、強力な魔剣を携えている。強者とは言えないまでも独特な存在感のある人間だった。
「魔王軍四天王、神速のシュネイル……だったか?」
剣士の男は我が名を知っていた。
「貴様、何者だ?」
「俺はリンカ。勇者リンカだ。ここでお前を倒させてもらう」
「ほう」
勇者ときた。人間どもの英雄が私を倒す、と。
「クハハハッ!」
笑わせる。ゴミが調子に乗りおって!
こうして私の居場所を捉え道を遮った
「人間相手に振るうのは勿体ない業物ではあるが――」
「その業物を使う最後の機会だ。心残りのないようにな」
勇者を名乗った男が淡々と、だがはっきりと煽ってきた。
「殺す!!」
我が神速の剣にて、頭と胴を泣き別れにしてくれる!
地面を蹴った刹那、私はその人間――勇者リンカの口元が笑みの形に歪むのを視認した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます