第26話 元気になりました

 メデューサを撃破してその日のうちに俺はローズに無理やり馬車に詰められた。


「お、おい。どこに行くんだよ?」


「私以外にも被害者はいたでしょ! リーフのところに行くわよ!」


 今は3時ごろだ。今から行けば夜には夕方くらいには行けると思うが……


「俺も行く必要あんのか?」


 リーフがどうなっているかは俺も気になる所ではあるが別にローズ1人で行けばいいだろうに。……はっきり言ってめんどい。


「あるわよ! リーフのご両親もきっとアンタにお礼を言いたいはずよ!」


「はぁ、わかった。大人しくついてくよ」


 俺は肩をすくめてそう言った。多分こいつは俺が断っても強引にでも連れて行くだろう。


「まあ元々拒否権なんてないけどね!」


 ローズは笑顔でそう言った。……まぁ、リーフに会ってみるともいいだろう。村1番の美人とか気になるしな。


「アンタ変なこと考えてない?」


 鋭い奴め。


「考えてねーよ」





 あれから馬車に揺られる事数時間。日が暮れてきた頃に村に着いた。


「さっ、行くわよ!」


 馬車から出て行くとすぐにローズは走り出した。


「お、おい。走ると危ないぞ。誰かにあたっても知らないからな」


 俺はそう言って後ろをついて行く。


「そんなドジじゃないわよ! はや痛っ!」


 なんて言いながら早速誰かとぶつかった。アイツのフラグ回収スピードはどうなっているんだ。

 

「ほら言わんこっちゃない。大丈夫か? アンタも悪いな。この馬鹿が前を見てないせいで」


 俺はそう言ってローズに手を差し出した。


「誰が馬鹿よ! じゃなくてごめんなさい。少し急いでいて立てる?」


 俺の手を取って立ち上がるとローズは立ち上がってぶつかった女の子へ手を向けた。


「は、はい……私の方こそごめんなさい。外に出るのが慣れてくて……あ、アレク様!?」


 ローズの手をとって立ち上がった美少女が俺の方を見て驚いている。俺は彼女と会ったことがないぞ……あぁ、そういうことか。


「よっ、少しぶりだな。その様子だと無事魔法は解けたようだな」


「はい、ありがとございます! ……もしかしてこちらの女性は」


 ローズの方はリーフを見て既に涙目だ。


「リーフ。貴方ってこんなに可愛かったのね」


 声でわかる。またローズは泣いているな。


「ローズ様こそ、可愛いじゃないですか」


「リーフ!」


「ローズ!」


 お互いの名前を呼んでローズとリーフは抱き合った。これに口を挟むのは野暮だな。流石の俺でもわかる。


 俺は少し離れた位置で2人を見守るのだった。

 それからリーフの提案でリーフの実家に行ってから俺達はプチ宴会をするのだった……



「おはようございます、ご主人様。朝ですよ」


 次の日の朝セラに起こされた。俺は今寮まで帰ってきている。昨日遅くまでリーフの家に居たせいで、まだ眠い。というか全然寝足りない。


「あと5時間……」


「分感覚で言わないでください。お昼まで眠るつもりですか?」


 とは言え眠い。仕方ないあの手を使おう。


「セラー、頭が痛い。今日は休むから連絡しといてくれ」


 必殺仮病だ。前世でも時々やったなと思い出す。まさかこの世界でもやる機会があるとは思わなかった。


「構わないんですか? 昨日の休みもクレム様に知られていると思いますが……」


「ふー、急に目が覚めてきたな。よしっ! 学校行くぞ! ……はぁ」


 から元気を出すが現実はしんどいままだ。


「朝食はどうされますか?」


 眠すぎて気分悪い。正直言っていらない。


「セラが食べといてくれ。俺は学校に行く準備してくる」


 制服に着替えて俺は学校に向かう準備をする。


「いってらっしゃいませ」


 準備が終えて寮を出ようとしたらセラからいってらっしゃいの挨拶をされた。


「おう、行ってきます」



 学校へと向かう途中。ノエルと出会った。


「おはよう!」


 ノエルは笑顔で挨拶をしてきた。


「ふぁー、おはよう」


 ついあくびが出てしまった。にしても眠すぎる。


「凄い眠たそうだね……昨日あれから何をしてたの?」


「あぁ、あの後は……」


 俺それから昨日何があったのか説明した。そしてそれが終わる頃には教室についていた。


「へー、そんなことがあったんだねぇ。でも良かったよ。無事ローズちゃんのことも解決できて便利屋サークルも第一歩を踏み出せたって感じだね!」


「まあ確かにな……これから依頼も増えてくれるといいけどなぁ……」


 この調子で困っている人を助けていればきっと周りの評価も上がってくるだろう。


「やぁ、おはよう。目の隈がすごいね。あまり寝れてないのかい?」


 そんな話をしているとリヒトが爽やかな笑顔で挨拶をしてきた。後ろにはエリザベートもいる。


「おはようさん。そうなんだよ。昨日色々あってな……」


「昨日は学校にこれてなかったけど、風邪じゃなかったのかい?」


 本当の事言ってもいいけど長くなりそうだしなぁ。


「まあ、便利屋サークルの用事で色々な……」


「あぁ、そういうことか。もし僕に何か手伝えることがあったら言ってくれよ」


 おお、流石リヒト優しい。本当にローズの時に答えをはぐらかしたのか? ローズのやつなんか勘違いしてそうだな。


「だいじょーぶだよ。それはもう解決したから」


「そっか。それは良かった。……ところでアレク。何故君は手ぶらで学校に来ているんだい?」


 そう言われてハッとする。あれ? 俺鞄持ってなくね!?


「本当だ……全く気づかなかった。どうしよう?」


「馬鹿ね」


 エリザベートの一言はシンプルだが効果絶大だ。


「うっ……ノエルは気づかなかったのか!?」


 ずっと朝から一緒に来てたのにノエルは気づいていなかったのか。


「気づいてたけどアレク君だし。カバンとかいらねぇ! ってことかと……」


「んなわけあるか! お前は俺をどんな目で見てんだよ!」


 カバンがないと授業が受けれないじゃねぇか。教本もないしメモも取れないぞ。


「ご主人様!」


 そんな事を考えているとセラがメイド服のままやってきた。

 セラを見て、エルフ!? とか美人だ。とクラスが一斉に騒ぎ始めた。


「セラ! カバン持ってきてくれたのか!」


 セラの手を見ると俺のカバンを持っていた。


「はい。これからは忘れないでくださいね」


 そう言ってカバンを渡された。


「ありがとう、助かったよ」


 俺はそう言ってカバンを受け取った。するとセラは頭を下げて扉を閉めて教室を出て行った。


「ちょ、あのエルフはなんなのよ!?」


 エリザベートが驚いたような表情をしている。


「あぁ、俺の専属メイドだけど……」


「「「えぇぇぇぇ!?」」」


 事情を知っているノエル以外が驚いたような声を出した。

 まあ、エルフって珍しいよな。そしてすぐにその声は女は不潔だなんだと、男は羨ましいという声に変わって行った。


「驚いたよ、エルフの奴隷がいるなんて……」


 リヒトも驚いているようだ。


「まあ、色々あってな……」


 本当に色々あった。そう思いながら俺はそう答えた。


 すると次は扉がバンッと開いた。


「アレク! 居るかしら!」


 次の客はローズのようだ。今日は客が多いな。教室はあんな可愛い子いたか? なんで話になっている。まあ当然知るわけないわな。


「おう、どうした?」


「アレクとノエルはどっちが部長なの!?」


 ローズは俺の近くまできてそう言った。そういえばどっちが部長なんだ?

 俺はノエルの方を見た。


「勿論アレク君だよ!」


「という事らしい」


 ノエルの答えをそのままローズに伝える。


「私も便利屋サークルに入りたいの!」


 そう言って俺に入部届を叩きつけた。


「俺は構わないぞ。ノエルは?」


「人手が増えるなんてもちろん大歓迎だよ!」


 ノエルは頷いた。


「ええ、私が入ってあげるんだから感謝しなさいよね!」


 なんて偉そうな言い草だ。サークルに入れてもらう身分でここまで言えるのはローズくらいだろう。


「アレク彼女は?」


 近くにいたリヒトが気になったのかそんな質問をしてきた。


「ローズ・メリクリスです。リヒト様、お久しぶりですね」


 と嫌味な感じでローズは自己紹介をした。そしてそれを聞いたリヒトの顔は驚いている。


「ローズってあの?」


「あのもどのもしらないわよ。少し前に貴方に助けを求めてはぐらかされたローズよ」


 バチバチだ。というかローズが一方的にリヒトを睨んでいる構図だ。


「あなたねぇ! リヒトに何様よ!」


 とエリザベートが代わりに出てきてブチギレだ。


「まあまあ、落ち着けって……」


 なんで俺が喧嘩の仲裁なんてしなくちゃならないんだよ。と思いつつ、俺以外が止めれる雰囲気でも無さそうなので俺が止めた。


「「アンタは黙ってて!」」


 とんでもない飛び火だ。悲しくなる。

 そんな時ガラガラと扉が開いた。クレム先生だ。


「何をしている。さっさと席へつけ。それにお前は違うクラスだろ。出て行け」


 クレム先生がそういうと2人は睨み合ったあとそれぞれ自分の場所に移動するのだった。


 俺の仲裁ってなんだったんだろ? そんな事を思いながら俺は席へと着くのだった。

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